聖者の行進

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アリエッタと彼女の連れたライガの出現に立場は逆転した

ラゼルはと言うとアリエッタに捕まっていた


「“魔弾のリグレット”と“妖獣のアリエッタ”ですか。六神将が二人とは困りましたね」


そう言っているが全く困っているようには聞こえないよジェイド

アリエッタはラゼルの手を引いて階段を下りる


「アリエッタ、タルタロスはどうなった」

「制御不能のまま…この子が隔壁…引き裂いてくれて、ここまで来れたの…」


ラゼルの手を離しアリエッタはライガの頭を撫でる


「そう。よくやったわ。さあ、彼らを拘束して―」


不意に言葉を切り、リグレットが空…タルタロスの帆を仰ぐ

その瞬間、何かの影が彼女の傍に落ちてきて素早い動きでリグレットを弾き飛ばした

間髪入れずジェイドが動き、リグレットが武器を構えた時には再び状況が逆転した

ジェイドは私のすぐ隣にいるアリエッタの後ろにまわり、その首に槍を突き付けている

そして―


「ガイ様、華麗に参上」


イオンを脇に抱えて爽やかに笑みを浮かべた金髪の青年はそう言った


「きゃっ…」

『アリエッタ…!』


アリエッタのかすれた声に思わずラゼルは彼女の名を呼んだ

一切の容赦なくアリエッタの細い喉に槍を突き付けているジェイドを少し睨みながら


「さあ。もう一度武器を棄ててタルタロスの中に戻ってもらいましょうか」


リグレットは言われた通り武器を棄て階段を上がっていく

ガイと名乗った青年とルークがリグレットの棄てた譜業銃について話ていたりしていた


「さあ、アリエッタ」


リグレットが乗艦したのを見たジェイドがアリエッタに言う


「次は貴女です。魔物を連れてタルタロスへ」


アリエッタは泣きそうな顔でラゼルを見て、次にイオンを見た


「ラゼル……イオン様…あの…あの…」

「言うことを聞いてください、アリエッタ…」

『ごめんね、アリエッタ』


ラゼルはアリエッタの頭を優しく撫で、タルタロスに行くよう促す

アリエッタは抱きしめたぬいぐるみに顔を押しつけるようにして、振り切るように階段を駆け上がった

兵士達もあとに続く

全員が昇降口に入るとタルタロスの船体横にあるパネルを操作し階段を上げ、隔壁を閉じた


「これで暫く全ての昇降口が開きません。逃げきるには十分とは言えませんが、時間稼ぎにはなるでしょう」


ルークは立ち上がるとガイの二の腕を叩く


「ガイ!よく来てくれたな!」

「やー、探したぜぇ。こんなところにいやがるとはなー」

「お友達ですか?」


ジェイドの声にガイは振り返る


「ルークの家の使用人だよ。そういうあんたは?」

「御覧の通りマルクト帝国軍の軍人ですよ」


それだけ言うとジェイドはイオンを振り返る


「ところでイオン様。アニスはどうしました?」

「敵に奪われた親書を取り返そうとして船窓から吹き飛ばされて…ただ、遺体が見つからないと話しているのを聞いたので無事でいてくれるかと」


イオンはちょっと心配そうだったがアニスなら大丈夫だと思っているようだった


「それならセントビナーへ向かいましょう。アニスとの合流が先です」

「そちらさんの部下は?まだ、この陸艦に残ってるんだろ?」

「生き残りがいるとは思えません。証人を残してはローレライ教団とマルクトとの間で紛争になりますからね」


生き残りはいる

多分全員生きているが問い詰められるのは嫌なので黙っておく


『何人乗ってたの?』

「今回の任務は極秘でしたから常時の半数…百四十名ほどですね」


そんなにいたのか…

ユエ達はちゃんと回収できたか少し不安だが彼らのことだ、大丈夫だろう


「行きましょう」


閉じた昇降口を見上げていたティアが言った


「私達が捕まったら、もっと沢山の人が戦争で亡くなるんだから…」


その声は無理矢理に全ての感情を殺したかのように平坦で、だが、僅かに震えていた




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