短編集
□におに嫉妬される
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「みなと、甘えさせろぃ。」
『えぇ!?』
部室に入ってきたブン太くんが開口一番に言った。
今部室には、レギュラーがほとんど揃ってて、その中には私の彼氏の仁王くんがいる。
ブン太くんとは幼なじみだから仲がいいだけなんだけど、仁王くんの嫉妬深さはすごい。
「みなと、膝枕!!」
『え、と…あの…。』
「ダメ?」
『や、いい…けど。』
一瞬で折れてしまった。
さすがにまずいかなあと思って仁王くんを見ると、こっちは完全無視で柳生くんと話している。
ブン太くんが甘えてくるのは初めてのことではないのだけど、仁王くんがいる前では初めてだった。
ブン太くんを膝枕しながら、あまりにも興味なさそうな仁王くんにほんの少し寂しくなった。
膝で気持ちよさそうに目を瞑るブン太くんを見て、そういえば私たちが付き合っていることをレギュラー達に言ってなかったと気付いた。
だからかなあ…。
仁王くんが怒ってしまう前に、ブン太くんが離れてくれる事を願った。
…今まであんまり意識してこなかったけど、ブン太くんかっこいいなあ。
モテモテなだけあるよね。
無意識にブン太くんの髪に触れるとそれはサラサラと指の間をすり抜けた。
羨ましいな…。
ブン太くんが突然、身体を起こした。
「みなと、彼氏いんの?」
『あ、えっと…』
チラリと仁王くんを見る。
だけど彼はこっちのことなんてまるで気にしていない。
『い、いるよ!!』
「え、いんの!?」
『うん!!い、る!!』
近くに仁王くんがいるから声がなんだか裏返る。
「誰だよぃ。」
ブン太くんが不機嫌そうに聞いた。
『え、と』
「マジでそいつが好きなの?」
本人がいる前で言うのは恥ずかしい。
仁王くんをもう一度見ると、今度は目があった。
真剣な目でこっちをずっと睨んでいる。
…怖っ!!
なんて言ったら怒られないかな;
「で、好きなの?」
『うん!!だ…だいす、き!!』
つい声が大きくなってしまった。
「ありえねえだろぃ…。誰だよ、そいつ…。」
「俺じゃよ。」
突然仁王くんがブン太くんと私の間に入ってきた。
「口説いても無駄じゃき。こいつは俺にベタ惚れじゃ。」