短編集

□私しか知らない一面(財前)
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「ねえあんた本当に光くんと付き合ってるの?」



よく光のことを好きな子に言われる。


今日は鼻で笑われながら。



今から光と帰る約束してるし付き合ってるんじゃないですかね

絶対口にはだせないなw


「光くんあんたより私たちに対しての方が優しいし。」


確かにそうだよね、と心で呟く。


と同時に寂しくなった。




「ぶっちゃけ付き合ってもらってるって感じ?」

「距離があるよねー!」


確かに光はいっこ下の学年だから学校で一緒にいることは少ない。

一緒に帰るのも私が受験生で塾に入っちゃったからほとんどない。


「好きじゃないなら別れてよね。」


捨て台詞のようにいわれた。






…それは無理だろうなあ…。



さっきから会話してるようでしてない気がする


要するに一方的に言われただけ。






苦笑いしながら彼女たちを見送った。






「あ。」


後ろから聞き慣れた声がした。


『光?』



「光くん!?」

去りかけてたさっきの女の子たちが帰ってきた


「ども、」

ちゃんとおじぎしてる。


光はいいこだなあ…



あとで褒めてあげよ。



「光くんはみなとのどこが好きなの?」



「どーでもいいっすわ。」



あ、やっぱそういうこと言うんだ。
だから私が別れてって言われちゃうんだよ。


光と話しながら女の子達が勝ち誇ったようにこっちを見る。


もういいや。

せっかく久しぶりに一緒に帰れるのに。

うん、音楽聴いて待ってよ。



だいぶ時間がたった後、女の子達は帰ったらしい。


帰った瞬間、光がこっちに走ってくるのが見えた。



「先輩、」


呼ばれたけど聞こえないふり。


どーでもいいんでしょ!



「先輩?」


首を傾げる光。


ああもう可愛い!


「聞こえてへんのですか?」


そう言われてイヤホンをしたまま、チラッと光を見た。



「俺が悪かった、すから…」




返事をしない私に不安を抱き始める




「嫌や、嫌いにならないで。」



いい加減可哀相だな…




『嫌いじゃないよ。』


「みなと先輩、」


ぎゅーっと抱きしめられる




『くるしい…』



「先輩イヤホンとって。」



『はいはい。』


イヤホン外すと嬉しそうな顔をした。



「先輩がすきっすわ。」



『私も、光すき!』



「さっきはすんません。」



『ん、いいよ。』




ちゃんと挨拶しててえらかったね、と頭を撫でる。





「最近受験勉強でみなとさんが構ってくれへんから寂しかった。」




『ごめんね、』



「だから合格したら、一日中離さないっすから。」



『はいはい、じゃあ帰ろうか。』




「みなとさん、手。」



ちょっと照れた顔で手をのばしてきた。




それを握るとぎゅって握り返された。







みんなに別れろって言われちゃうのは辛いけど、

光のこんな一面を知ってるのは私だけでいいの。
 

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