短編集
□過保護な謙也
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「ちょ、先輩!危なくないっすか?」
『だいじょぶだいじょーぶ!光はビビりだなあ。』
「は、うざ。」
『あと少しだからねー!』
視線の先にはにゃーにゃーと怯えてぶるぶる震える子猫。
どうやら木から降りられなくなってしまったらしく、木に登って救助中。
「ほんまに、俺がやりますから、先輩。」
『ここまで来て引き下がってたまるか!そもそも私の方が年上だから強い!』
「なんすかそれ。もういい加減にせんと謙也さん呼びますよ。」
『え。け…謙也?』
「嫌やったらはよ降りてください。」
いま謙也を呼ばれたら一溜まりもない。
『あと少しなのーっ!』
「危ない、すから!」
『届いた!光!』
猫を両手で抱きしめる。
必然的に手が木から離れ、身体を支えるものがなくなった。
「え、ちょ!先輩!」
『あ、きゃああ!』
案の定木から落ちる。
『いてて、…光?』
「怪我、とかしてへん?」
落ちた瞬間、光がスライディングして受け止めてくれた。
『ひひひひひかるううう!!!!!!ごめんっ!!!!怪我してない!?腕、腕は!?足とか、大丈夫!?うわ、痛っ!!』
大きな声に驚いて腕に抱えてた子猫が腕を引っ掻いて走り去った。
『痛い、じゃなくて!光!光大丈夫!?』
軽くパニックになりながら必死に謝った。
「ぷっ…大丈夫すよ。さすがっすね。」
『なにが?』
「真っ先にスポーツマンの身体の心配するとか。さすが謙也さんの彼女。」
優しく笑う光に顔が真っ赤になった
「とりあえず…よいしょ。」
『ひ、ひか!おろして!』
お姫様だっこされてもう頭パニック。
「ええから。大人しく保健室に運ばれといてください。」
そのままテニスコートを横切った瞬間。
「うわあああああああああああああああああああ!!!!!」
私の彼氏らしき人の叫びが響いた。
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