短編集

□デレデレぜんざいぜん
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「先輩、」


『うわ、ぜんざいだ。』


部室に入った瞬間駆け寄ってきた恋人兼後輩に冷たい一言を言い放つと明らかに不機嫌な顔をされた。


「ムカつく。」


そう言いながらも私にすり寄ってくるのはやっぱり私の事が好きだからだと思う。



『ぜんざい、暑い。』



「緊張してるんすか?」


嫌みのつもりで言ったのにニヤリと笑う笑顔に心臓が高鳴る。



『もう皆来るから、離れて。』

心臓の音を誤魔化すために光の身体を遠ざける。


「心臓、五月蠅すぎて俺にも聞こえてはりますよ?」

耳元で低く響いた声に身体が震えた。



「先輩、ほんまに可愛え。」



『うるさい。』


「可愛え。」


『ひゃっ!』


顔を背けると後ろから耳を舐められた。


『ひ、ひか!やめ…っ』


「耳、気持ちええんや?」


『い、や…!ひか、離してっ!』


慌てて光の方に向き直る。


「先輩、俺もう止まらへん。」

『え?ちょ!ひか、んっ!』


正面から唇を塞がれた。


『っ…、んっはぁ…』



「声、皆に聞こえてまうかもしれへんから気ぃつけて下さいね。」


『光が、やめればいいの!』



「やっとや。」


『は?』


「やっと、名前呼んでもらえた。」



そう言って嬉しそうに笑った光に真っ赤にそまる頬。

可愛い…。



『光、好き。』



「可愛え。ほんまに、好きっすわ。」




光の顔が近づいて、私も目を閉じる。



その瞬間。


「白石ーっ!!」

「ちょ、待ちいや!金ちゃん!!!」


ガチャリとドアの開く音。


「けんやあああ!!財前とねーちゃんがエロい事しとる!!」

「財前なにしとんのやああああああああ!!!」


飛び込んできた金ちゃん。
それに続く謙也くん。



「うっさいすわ。」


「財前ほんまになにしとるん!!!ええから場所変えや!!!」

真っ赤になりながら叫ぶ謙也くん。


「はいはい続行ー。」


『ひかる、』


「先輩、好きやで…。」




「しらいしいいいいいいいいいいい!!!!!財前とみなとがああああああああ」



謙也くんがチクったせいで、私たちはこのあと蔵ノ介くんに怒られた。

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