復活リクエスト2

□近づき、離れる
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「花は好きですか?」

突然、隣にいる男がそう言った。
髪型とオッドアイが特徴的な男だ。
最近この町に出入りするようになった隣町の住人ということしか知らない。

「なんで」

「気になったので」

クフフ、とこれまた特徴的な笑い声。
完璧な作り笑いを貼り付けている顔が少し不快にさせた。

「興味無い」

「そうですか、では質問を変えます。桜は好きですか?」

「桜?」

桜といえばあの保険医のせいで近づくことさえ困難になってしまった植物。
以前は好きだったのに、今では不快に感じるようになってしまった。

「桜は嫌い」

「おや、そうでしたか」

「それがなに」

不快感とともに浮かぶ疑問。
今は桜の季節ではないし、現在居るこの公園には桜の木は一本もない。
なのに何故この男は桜という単語を出したのか。

「いいえ、ただ今年の並盛の桜はとても美しかったと聞いたものですから」

ああ、また貼り付けた笑み。
不快感が上乗せされる。
この笑みは本当に嫌い。大嫌い。

「そういう君は?」

「はい?」

「好きな花、あるの?」

聞くと、彼は考え込む仕草をした。

「特にありませんが、強いて言うなら赤い花、ですかね」

「ふーん」

「赤色は、君によく映えると思いませんか?」

彼は私の正面に立ち、私の髪に触れた。

「さあ?」

彼の手を払いのける。
他人に触られるのは好きじゃないし、この男に触れられるのはもっと嫌。
動悸がする。

「…暗くなってきましたね」

「そうみたいだね」

夕焼け色だった空は徐々に黒に染まろうとしていた。
確か彼と話し始めたのは空が夕焼け色に染まり始めた頃だったか。
この男といると時間の感覚が無くなってしまう。

「そろそろ帰ったほうがいいですね、送っていきましょうか?」

「要らない、私は君に送ってもらわなきゃいけないほど弱くないからね」

私が笑うと彼もまた笑った。

「では、また」

「…うん」

そう言い、公園の前で別れた。

私が唯一側にいても良いと思えた彼。
こうして「また」と再び会おうという言葉を発するのも何回目だろうか。
大切な存在かどうかは自分でも解らない。
でも自分の中で彼は、特別な存在であることは知っている。
名前も住んでいる場所も通っている学校も知らない、そんな関係だけど。





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