□泣き虫
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『遅くなっちゃった、早く帰らなきゃ』


図書館で勉強していたら夜になってしまった、空にはもう月が出ていた
少し速めに歩いて、自分の寮へ向かう。その時だった

ガサガサ

物音がして振り返るがなにもいない、誰もいない
気のせいかとそのまま歩くがまたガサガサと音がした、それは確実に私に近づいていた
怖い。
早歩きから小走りにいつの間にか全力で走っていた
逃げているはずなのに音が遠くにならない、むしろ近づいてる

足を止めて恐る恐る振り返るとそこにいたのは変な生き物
小さな鬼のような、それは何匹かいて一斉に私に襲い掛かってきた

悲鳴もあげられず、そのまま目を閉じた
と同時に聞こえた銃声と誰かの声


『あれ…?』

「大丈夫ですか、朱祢さん」



そこにいたのは雪男くん
ただいつもの優しい顔じゃなくて、怖い顔をした雪男くんだった
そしてその手には銃が握られていて、黒いコートを着ていた

そしてさっきの鬼を銃で撃ったあと、こっちにやってきた


「怪我とかしてない?」

『大丈夫、だけど…雪男くんその姿』

「あ、これはその…」

『……言いにくいよね、無理には言わなくていいから。皆にも言わないし、…助けてくれたんだよね?ありがとう』

「いえ、それが僕の仕事ですから」

『そっか…』



と次の言葉を口にしようとしたとき私の目から涙が溢れてきた
雪男くんも少し戸惑ったが、もう大丈夫だよっと言い頭を撫でてくれた


『あ、あれ?』

「怖い思いさせてごめんね」

『ううん、違うの。安心して…、ありがとう雪男くん』

「うん」


泣き止んだ私をまた雪男くんは送ってくれた
まだ怖がっている私を安心させるために手を握って、その温もりを確かめるために私は握り返していた

その温もりが私に安心を与えてくれてた



『ほんとにありがとう、おやすみなさい雪男くん』

「はい、おやすみなさい。あと…」

『?』

「また怖い思いをしたらいつでも言ってください、一人で抱え込まないでね。怖い思いさせないようにするけど、何があるかわからないからね」

『うん、また助けられちゃったね。雪男くんはいつも私が困っているときに助けてくれる、感謝してもしきれないよ』

「僕も朱祢さんに助けられてるよ」

『私とくに何もしてないよ?』

「そう?でも僕は助けられてるよ」


そうしてまたいつもと同じように笑った
私もつられて笑ってしまう、彼は私が寮に入るまで見ていて、最後に手を振ると小さく振り替えしてくれた
出会った時と同じように…









*****
僕は貴女に助けられている。
貴女の笑顔にいつも元気をもらうから、だから笑っていて…。
 

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