君に出逢えて…

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交通事故から1ヶ月。
医者からやっと車イスでの移動を許可された。
慣れない手付きで車イスを動かし、廊下を進んで行くと休憩スペースから声が聞こえてくる。随分若そうな男の子の声、のぞきこむように見るとそこにいたのは自分と同じくらいの男の子と元気なおじいちゃんがいた。
二人は机越しに向かい合い何かをしていたが、男の子が私に気がつき手を止め話しかけてきた。


「そんなとこで何やってんだ?よかったらこっちに来いよ!」
「おぉ、若い娘さんじゃないか。いらっしゃい。」


特に用事があったわけでもないので、誘いを受け男の子とおじいちゃんの間に行く。


「今じいちゃんと花札やっててさ、毎回負けちゃうんだけどな。」
「わしに勝とうなんぞ10年早いわ、ほい!三光じゃ!」
「うわ、猪鹿蝶揃えてからの三光って俺の負けじゃん!」
「あ、お嬢さんもやってみるかい?花札」
『え、…ルールわからないので教えながらで…お願いします』


おじいちゃんに教えてもらいながらやろうとしたら、看護婦さんが検査の時間ですよとおじいちゃんに話しかけた。
おじいちゃんはすまん。と謝りまた今度な!と次教えてくれる約束をし検査室へ向かった。
残された私と男の子。どうしようと思っていたら男の子が話かけてきた。


「まだ名前言ってなかったな。俺、木吉鉄平!高1なんだ、あんたは?」
『…み、宮地茉奈。中3』
「なら、受験生か!」
『まぁ、受験生ですけど行きたい高校とかまだ決めてないし…』
「ゆっくり決めればいいじゃねーか、な?」
『…うん。』


それから何気ない話をしていた私たち。お互いに学校の話や友達の話をした。そして怪我のことも…


『私、バスケ部なんだけど交通事故で怪我して。もうバスケはやらないほうがいいって言われちゃったの。』
「そうなのか…」
『でもね!プレイはできなくてもサポートはできるから高校生になったらマネージャーやろうかなって思ってるんだ!』


と話したら木吉さんは私の頭に手を置いた。何かと思っていたらそのままよしよし!っと言いながら撫でてきた。


「お前は強いな。俺も、もう一度バスケするために早く怪我を治さなきゃな」
『…私、木吉さんがバスケしてるとこ見てみたいです!怪我治ったら絶対試合見に行きますから!』
「なら、約束な?」



小指を出してきた木吉さん。
私も小指を出して、二人でした指切り。それからも二人はバスケのことを語っていた、看護婦から部屋に戻りなさいと言われるまで。

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