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□0001:文字通り世界に響け
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フィフスセクターって、管理組織。

つい最近からはじまったその制度に私はうんざりしていた。




というか、みんな同じだよねサッカーをしている子はつらいよね。






「南沢くんはやめちゃうのー?」

「名無しさんもやめろよ、俺と一緒にいちゃいちゃしようぜ」

「お断りー」







南沢くんの手を振り払って笑う。

いま、雷門はゆれている。

そんな状況で私までやめちゃったらきっと。








「神童のため、か」

「キャプテンを支えるのは霧野と私だよ」








大事な幼なじみなの、弟なのよと笑うと南沢くんはふん、と笑って私の頭を撫でた。







「がんばれよ」






ああ、本当は優しい。
知ってる、全部知ってる。




だから、南沢くんの分までがんばるよと笑うとうれしくなさそうにサンキューと笑った。








「拓人、南沢くんと話してきた。」

「そう・・・か・・・」








そりゃあ。

南沢くんがやめて、剣城くんは練習にこない。

革命に乗り込んだのはたった4人。





霧野さえも今、迷ってる。






どうしようもない状況だよね、心配性な君が心痛まないはずがない。







「私ね、自由なサッカーがみたいな」








拓人の手をぎゅっとにぎってそう笑う。
そしたら拓人は表情を歪めて私を見た。








「もう、苦しそうにサッカーをするみんなを見るのは嫌。」







初めて、管理された試合が行われたとき私はまるで馬鹿みたいに泣きじゃくった。




南沢くんが大丈夫だって、
三国くんが俺たちは大丈夫だって、そう言ってくれた。

車田くんは精一杯笑ってくれて、天城くんは私の頭をなでた。







一番辛いはずなのに、私をなぐさめた。





南沢くんは私を強く抱きしめてくれたのを今でもよく覚えている。









「私は、どこまでも拓人についてく。だから、拓人がやりたいようにすればいいの」






いつか、彼に自由なサッカーをあげたい。
そうとさえ、思ったんだ。







「名無しさんは、サッカーやめろ・・・」

「なんで?」

「ダメになる、名無しさんの将来は俺のものなんかじゃない!」







自分のせいで、私が無理してるとまで考えこんで誰が得をするんだい?





拓人をぎゅっとだきしめる。
何年か前、みんながくれたように拓人にも。





大丈夫、私は大丈夫。







「私が拓人についていきたいの。それだけなの」







私の我が儘だよ、と笑うと泣き虫な君は泣いてしまうだろうね。

それでいいよ、ずっと君は我慢してきたんだから少しくらい。







「ねえ、天馬くんに感謝しなきゃね。」

「・・・そう、だな」

「大丈夫。」







大丈夫、最悪を知ってるから。
それ以上なんてもうないから。


ね?と笑うとああ、と拓人がやっと笑ってくれた。






夢を語ろうか。

私がマネージャーをしていて、拓人はキャプテンをしている。
天馬くんがはやくサッカーやりましょうってうずうずしてて、信助くんはそれに乗るの。



きっと新しい部員も増えてるでしょうね。
優勝して、フィフスセクターはなくなって。








「私は、卒業するの」








ひと足先に、高校生になって。
誰と同じ高校に行ってるかわかんないけれど、私はまたマネージャーをしてて。



きっと拓人と敵対するの。
それもきっと楽しいね。







「自由な、サッカーを。」

「・・・名無しさん」

「ね?」







楽しいでしょ?楽しみでしょ?


だからもう俯かないでキャプテン。








「天馬くんみたいに、サッカー楽しい!超楽しい!!って笑って?」







お願いだから、笑顔をみせて。


そしたらきっと届くから。ね?








[文字通り世界に響け]







それだけが、願いかなあ?

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