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□0004:愛を知る。そして泣く。
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指にキスをする。

すると本当にくすぐったそうにあなたが笑った。







「篤志、急にどうしたの?」







くすりと笑うあなたは、いつも大人の魅力を忘れない。

あなたと、名無しさんといると自分がとんでもなく子供だと感じる。






髪をなでるとどうしたの?と名無しさんも俺の髪を撫でる。








「篤志の髪、私好きだなあ」







そう柔らかい声で言われて胸が高鳴る。

俺も、名無しさんの髪が好き。
そう伝えることなく名無しさんの髪にそっとキスを落とす。









「どうしたの?今日、ちゅーしてばっかだね?」







髪に、瞼に、指。


愛しい、愛しい愛しい。







その感情が爆発しそうになる。
ただ、一方的な感情を押し付けるなんて子供な俺にはできない。




嫌われたくない、愛してほしい。



そうただ頭で繰り返す。








「篤志、かわいい」






ぎゅう、と抱きしめられて思わず顔が赤くなる。
かわいいなんて言われてもうれしくなんかないのに彼女の吐く砂糖にほだされる。





名無しさんから頬にキスをされて、泣きそうになる。







年上。
歳の差は9つ。

価値観もなにもかも違う二人。






けれど、俺は名無しさんを好きになった。


・・・名無しさんは?






年下に迫られて仕方なく付き合ってくれてるんじゃないのかな。

優しい君のことだから、恋人ごっこなんて慣れっこなんだろう。






だから君からなキスにも不安が募る。





最後のキスにならないだろうか、次はあるんだろうか。





いつも頭を占めているのはそのことばかり。








「名無しさんも、かわいい」

「やだ、24歳だよ私。かわいいなんてもう似合わない」







実際に、めちゃくちゃかわいい。
そう伝えたらきっと彼女は顔を赤くして怒るから言わない。




ぎゅー、と抱きしめる力を強めると名無しさんは俺の頬を撫でた。








「篤志、私ね、フィフスセクターやめるよ」

「えっ?」

「篤志がやりたいことを一番近くで見ていたいの。」








あなたに私はついて行く。
革命選抜チームの監督にでも、マネージャーにでも、なんにでもなれる。





あ、栄養士になってもいいね。
革命を全力でサポートするの。




私、今のサッカーは間違ってないと思ってた。
でも楽しそうにサッカーする篤志をみて、間違ってたんだなって。








「篤志のおかげで気づけたの。
篤志は私にいろんなものをくれるね」








私にサッカーを、恋を、愛を。

好きって気持ちを、離れたくない離したくないって気持ちをありがとう。








そう笑った名無しさんは俺を抱きしめかえした。






ああ、








「篤志、泣いてるの?」

「名無しさんこそ、」

「ふふっ・・・篤志、好きだよ。」









[愛を知る。そして泣く。]








不安だった。
どうしようもなく不安だった。


でも、大丈夫だと笑う彼女がいるから。






思わず、涙が止まらなかったんだ。

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