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□0005:生きてる事を蔑んでくれ
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ガリッとか、そーいう音が似合うんだろーなあなんて怪我をした。

自分自身で手首を噛み切っただけだけど。






それを見て彼は呆然。
私はその手首を掲げて彼に首を傾げた。







「これでいい?」







意味がわからないと言うように無反応な彼。
ああ、ちなみに同じ政府の人間で一応仲間の潤目、ね。




潤目の瞳には笑った私、潤目の頬には汗が伝う。





そんなに緊張した場面でもないのに、潤目は今にも死にそうだ。








「こんな感情欠落人間が、政府の手配した人間だなんて信じられない」








そう吐き出すように言葉をやっとつぶやいた彼は私に包帯を投げつけた。

そして止血しろと目で訴える。





私は包帯を見つめ、首を傾げた。







「どうして?」

「どうしてって・・・」

「これは私の不始末への罰だよ?
ここから腐り落ちればいっそ罰は成功なんじゃないのかしら」








私は朝長出を見逃した。
殺す、とまでは許可は下りてないものの私には異端児を縛り上げる許可くらいは下りている。






けれど、それをしなかった。
そのせいでたくさんの人が死んだ。


日向は私を咎めたけれど潤目はそうはしなかった。




だから心地悪くて手首を噛み切ったのに。








「君は、どうして手首が腐り落ちればいいなんて言うんだ?」

「うーん、そしたら異端児を縛り上げられないじゃない」

「生活は?」

「苦じゃないと思うの」








生きていることのほうがよっぽど苦だわ、と本音をつぶやくと潤目は目を丸くした。





生きるための活動なんてくだらない。


そう吐き捨てて、血をなめる。
今頃になって傷が痛みはじめた。






いっそ、腐り落ちればいい。

いっそ切り落とせばいい。



そう、思うようになった。







「年少から楢鹿に来るための修行をしていたら、そう狂うのかな。」








ほら、怖くないから近づいておいで。
手当てをしよう、大丈夫腐らせやしないさ。






そう威嚇する猫に諭すかのように私に語りかける。


私は包帯を持って、潤目に近づく。

潤目は包帯を取り上げ、私の手首を見た。








「容赦ないな」

「こう、責任をとれと教わったわ」







人を殺せばお前も死ねと教わったわ、とつぶやきと潤目は私の体を引き寄せた。




私、生まれた意味なんてないの。
楢鹿のために生きるのよ。








そう笑うと、違うと言われてしまった。

やだなあ、ムキにならないで。





私にはこれしかないのよね。





ぐいっと潤目の瞳を覗き込んで、笑っている私を確認。






そして大々的に言った。








「[生きてる事を蔑んでくれ]」







それだけで生きていけるわ、一週間くらい。

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