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□0011:協力するということ
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彼は私に手を伸ばして笑う。
いつでもいいんじゃない?
どうでもいいんじゃない?
と投げるように吐いた私を見て、聞いて、笑う。



やっぱり彼は普通じゃなかった。
なら、排除するかされるかの二択しか私には残されていない。





「なあ、仲間にならない?名無しさんチャン」







あれまあ、世界が逆転した。


殺される側から殺す側に逆転した。



あーあ。







「いーよ、ものすごく面倒くさいけれど。」





協力は、してあげると笑う。



死にたかったとか言ったら、きっと殺してくれるんだろうなあ。

なにも失うものなんてないから、だから私をころしてくれるんだろうなぁ。



でもそれを言わないのは。
きっと、この復讐劇の結末を知りたいから。



賭けをするならば朝長の負けに一万円。







「1組と対立してるんだっけ?」

「対立?そんなものしてねーよ」







ああ、そっか一方的に殺すつもりだもんね。
対立だなんて思ってないのか。


邪魔なら殺す、自分の思い通りにならないなら殺す。

なんだ、ただの子供か。





ほしいものが手に入らなければ泣いて、わめいて。
そんなガキ。




おもしろい、興味を持った。
そんな言葉を心で言い聞かせて私は彼についていく。





別に1組に知り合いなんていないし、私はただの2組だし。


それに、面白くないと思ってたんだ。

だって水の蝕以来で全滅すると思ってた。
いや、全滅してほしいと望んでた。


なのに一人を犠牲に、水の蝕は終わった。



面白くないと思ってた。
なんて面白くない命のやり取りなんだと思ってた。







「ねぇ、人間っておもろいよね」

「なんだそれ。」






私は4組に乗り込んで。
朝長出に嗤ったあの時。


水の蝕でお困りだった4組さん、私は全滅を望んでいたとたたきつけると手を伸ばした。





どうせ、イレギュラーな事態ばかり起こるんだ。
主人公らしい主人公が1組にいるから。



実際に彼の能力はイレギュラーで、きっと普通じゃ生きていけない。



だから、そうなるまえにつぶそうと思ってたのに。


余計なことを。







「・・・お前、政府の?」

「まぁ、普通を維持するために送り込まれたって感じ?
楢鹿生の普通を守るための役割」





今年はイレギュラー。
だから全滅を望んだ。




そう笑ってやると、1組の政府関係者と関係あるのかと聞かれる。






「あっちは私を知ってるみたいだけど私は知らないよ。」






それに気づいてもいないアイツを私は仲間だとは思わない。

だって、今年は明らかにおかしい。




規則が乱れるのは嫌いなのと言って、壁に背中を預ける。







「なにか起こる前に全部殺すか全滅を望んでる」

「どうして」

「これ以上、耶麻の動きを活発にするわけにはいかないのよ」






今でさえも防戦一方。
ここをつぶすためには、このままが一番いい。





だから、私は。







「ねぇ、はやく1組でも何組でも潰しましょうよ」







できればあなたが嫌いな1組の英雄がいいなーと笑うと朝長が気に入ったとつぶやいた。




4組は使えない奴等ばっかりだったんだとよ。
私もそう思ってたよ。



いや、自分以外は使えない。




そうお互いに思ってる。

だからこそ。







「あんたはあの1組の英雄の能力、どう思う」

「普通じゃないよな、4組にほしいんだけど」

「いや、たぶん自分じゃあの能力発動できないよ。ずっと見てたんだけど、水の蝕で変わったのは一度だけだもの」

「へぇ」






あんな本当に自分が死にそうになる状況で変わらないなんておかしい、と言うとにやりと朝長が笑った。

そして続けろと私の隣に居座る。







「それに、一度変わった時・・・そのときは1組の英雄は死にかけてた。
水の蝕が目の前に飛び出してきて、そしてとっさに変わったって感じ。

あと、変わったあとは六道黄葉の意志はない。

でも変わった後の力は普通じゃないのよね」







私、嫌な予感がするのよと言うとそうだな邪魔だなと彼が言った。

そう、そうやって動かされて。





私にゆっくり毒されて。



そして手を汚すのはあなただけ。

だってもう何人をころしてるの?
私には考えられないなあ。






最後、全部邪魔なものがなくなったら私が処分してあげるよ。

そんで、終わり。





それでいい。
だから今は手を取り合いましょう。








[協力するということ]







いつか裏切られる想像をしていなさい。

いつでも裏切られると思っていなさい。



仲間になったわけじゃないの。
協力するだけ。





それって、そーいうことなのよ。

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