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□0013:晴れのち雨なら僕の勝ち
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今日は、蝕がありました。


天気は超がつくほど晴れ、雲一つもありません。

もー、こんなに晴天だから思わず授業サボって屋根で寝ちゃって死にかけたわー。


なにもかも天気が悪いわー。






「で、腕を怪我したと」

「蝕は絶対来ると思ってたんだけどね。まさか寝てる間に来るとか卑怯じゃね?」

「お前が馬鹿なだけだな」





一番に蝕と対面したかっただけなのー、と笑って腕を掲げる。

日向はため息をつきながら私の腕を無表情で見る。


なんだ、心配もしてくれないのかい?と聞くわけにもいかない。




だって、心配なんて無用だって知ってるし。






「で、明日蝕が来ても戦えるのか」

「よゆー。私があっさり利き腕をくれてやると思う?」





思わねー、と言った日向は私にデコピンをした。
なによ?と聞いたらなんでもないと言って席を立つ。






「どこいくの?」

「便所だよ」

「へー。」





腕が痛む。


確かに利き腕はくれてやるわけないけど、怪我は怪我。
しかも蛍ちゃんに顔をしかめられるくらいに肉がえぐれている。



それは日向には秘密。
戦う文字でもなんでもないくせに私を守ろうとするに決まってるから。



それに、それに?




なんだろう、日向に怪我してほしくないとか思ってんのかな。






「名無しさんちゃん大丈夫?」

「大丈夫大丈夫、かろうじて骨で繋がってるから」

「うわぁ、えぐい・・・」





隣で話をしていたアイラと黄葉が声をかけてきた。

ちなみにこのクラスの大半は私の腕の怪我を見ているのですっごく心配されました。
日向は見てないんだけどね私のことなんて気にせずにノアの後ろにいたらしいです。
なんて野郎だ。





「なんでそんな怪我したの?めずらしいね」

「んー、寝てたんだよね。んで騒がしいなぁと思って起きたら目の前に蝕がいて。
思わずぶん殴ったら引っかかれた。
腕、吹き飛んだと思ったわ。」





びっくりしたわーと笑うと笑えないよと心配してくれる。

びっくりしたのは本当。
腕が吹き飛んだと思ったのも本当。

骨が無事だったからよかったものの。






「骨までイッてたらもう私の腕はないね」





治る気配もないから、いっそ無い方がいいんだけどと腕を見せるとそんなこと言わないでと泣きそうな目を向けられる。



あーあ、どうしても負ける。






「日向くんも心配してたんだし、ね?」

「は?あいつが?」

「だって名無しさんちゃんが保健室に行ったって聞いて日向くん教室飛び出したんだよ。」




意外、と思いつつあれ?保健室には来なかったぞ心配するふりして遊んでたんじゃね?と黄葉に聞くと黄葉は苦笑い。






「だって、そんな怪我見たら日向くん・・・」

「あー。」





つまり、私がこんなひどい怪我してるのを見せたくなかったと。

確かに私のこの怪我を直接みたら日向、倒れるかもなあ。
えっぐいし。






「当分不便だけど、まあ・・・動かせるようにはなるとおもうからバレないと思うよ」

「それまでは私が名無しさんちゃんのこと守るからね!」

「いーよ、そんなの。私利き腕無事だし」






駄目!とアイラちゃんが私に怒鳴る。
びっくりしているとおずっと黄葉も私に言う。






「ぼ、僕もがんばって名無しさんちゃんのそばにいるから!」

「え、えええ・・・?」





私は両刀使い。
まぁ、二刀流ってやつですね。


あ、チサトの刀よりもごっつい斧みたいな刀だよ!



二刀が一刀になるだけ。
確かに死角が広くなるけどなんとかなるでしょ?とは思ってる。



なのになぁ。






「うわー、まだ血ぃ滲んでるじゃん」

「えっぐいわねー。包帯取り替えてくれば?」

「ミノさんとノアさんは何時の間にこのクラスに来たんです?」






いつのまにか、友人ができて。

無茶すると叱られて。




なんとかなる、じゃダメになって。





どうしても保守的になってしまう。






「名無しさんが怪我したっていうからー」

「心配してやってんのよ感謝しなさいよ」





へーへー、あざーすとやる気なく返事をするとノアに傷口を思い切りつかまれた。
殺そうと思った。






「つーか明日も晴れだろ?戦えるわけ?」

「明日はアメだよ」

「は?明日晴れだよな?」





いいや、雨だと思うなと笑うとノアがバーカと笑って私の頭を小突いた。
こいつ、腕が治ったら本気で闇討ちする。
誓う。





「天気予報では晴れって言ってたけど・・・」

「50パーセントの確率で雨だよ」

「いや、明日は絶対晴れるね!」






ムキになったミノが晴れだ晴れ、と連呼する。
私は思わず笑って、こういった。







[晴のち雨なら僕の勝ち]







それでいいでしょ?文句ないでしょ?






「・・・晴れなら、守らせろよ。」

「雨なら、放っといてね」






意地っ張りな私の嘘吐きゲーム

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