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□0002:もしもし、夜明けはまだですか
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繰り返す日常に、愛しいもの。
奪われたのは全部。


めんどくさくて、目を閉じていた。

涙もでてこない。







「名無しさん、久しぶりだなー!」







太陽の存在さえも無視した。

私のたった一人のキャプテンなのに、気づかないフリ。








「今のサッカーに意味なんてある?」

「サッカーはサッカーだろ?」

「そりゃそうだ」







知ってます?
このふざけた暗闇の核にかつての仲間がいるんです。

革命?
知りませんよ、そんなの。






そんなの、怖くて。




だから暗闇で目を閉じていたのに。
なのに急に現れた光、そう太陽のような彼に。








「名無しさんさん、サッカーしましょう!」








背筋が、溶けていく。


この状況を受け入れた私を、暖かく包み込む。







「・・・天馬くん、」

「はい」

「私ね、私ね・・・」





駄目だと思った。


まぶしくて目がくらんでいるのに、脳がぐらんぐらんに揺らいでいるのに。






「サッカー、大好きなの」





闇に隠した本音を暴露。

そして天馬くんにボールを投げつけた。
それを足で受け止めた天馬くんに笑ってみせた。






「天馬くん、サッカーやろうぜ」






ああ、懐かしいな。

体が弱くてサッカーができなかった私を導いたのは、小さな太陽と背中だった。
いつのまにかその小さな太陽は大きな光に、そしてまた新しい太陽が生れた。



まだ光は弱弱しくて、暗闇でもあまり目立ないけれど。




この子なら、いつかきっと。







「名無しさんさん、あんたは味方だっただろ?!」

「ごめんね。結局私、サッカー馬鹿なのよ」







諦めたなんて嘘ばかり、また一人、大切な人を傷つける。

でも、それでも、私は。








「ねぇ、いつかきっと」






その背中に届かなくても。







「私と、サッカーしてください」







いつかきっと届けるから。



手渡しで大きな愛を押し付けるから。






迷惑がらずに受け取ってほしい。
そのときまでは、がんばるから、だから。








「ねぇ、南沢くん。天馬くんってすごいよねぇ」

「少なからずあんたにも影響されましたよ。」

「ううん、天馬くんがいなきゃ私はここに立ってないよ。」








彼は、本当にすごいね。



私の太陽。




世界は太陽がなければ輝けない。








「フィフスセクターを裏切ったお前が今更なんの用だ」

「ははっ・・・足の使えない幹部なんていらないでしょ?聖帝さま。
今日はちょっとしたご報告に」

「・・・報告?」







「私は革命選抜チームを結成し、革命の手助けをする!
あなたたちのしていることは間違っている!」






やっと言い切った本音に聖帝は目を丸くして私を見た。

けれどフン、と笑って好きにしろと呟くように。





わかってるよ、あなたの邪魔はしない。
けれど、私も動かずに待っているのは嫌だった。



だから、ごめんね。








「言い切ってきた!」

「おー、おつかれー」

「名無しさんさん、いいんですか?フィフスセクターに喧嘩うっちゃって・・・」

「いーのいーの。
・・・あなたたちは私が守るから、思いっきりサッカーしてね」






やっとメンバーが集まって、みんなも仲が良くなって。

一つのチームになるころに、まだ雷門は勝ち進んでいて。




そーいや、怪我人が続出したんですってね?
あの雨宮太陽とやりあったって勝ったって本当らしいですね?


大したものだ。




本当に、私の太陽は。







「もしもし、」

『名無しさんか?どうした急に・・・あ、革命選抜チームの調子はどうだ?』

「順調。あ、円堂くん一ついい?」

『なんだ?』







[もしもし、夜明けはまだですか]






そう太陽に聞くと、そうだな、もう一眠りしてくれればすぐに。



眠っていれば、すぐにでも。



当たり前に朝がくるように。






明けない夜はないんだと太陽は言い切ったのです。
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