長編小説
□On the wind*道の彼方へ
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プロローグ
青く澄んだ初夏の空。その下の緑一色のフィールドの上に僕はいた。
フォワードの僕はゴール付近でボールを待つ。今ボールは相手チームのゴール前にあり、ディフェンスが奪おうとしている。
「りょーう!」
遠くから叫び声とともにボールが飛んできた。胸でトラップし足元にボールを落とすと同時にゴールへと走り出す。前へ前へと蹴り全速力で敵の選手を追い越す。
「あっ」
一瞬の出来事だった。ボールが自分の足から離れ、左側に現れた相手の選手の足に吸い付いていく。僕はボールを取り戻そうとそのディフェンスを追いかける。しかしボールはすでに数メートル先に飛ばされ、小さくなっていた。
ピッピッピッ――!
試合終了。二対三で相手チームの勝利。
僕はその場に膝をつき、空を仰いだ。
……もう限界だな。
中学三年の夏。県大会決勝戦惜敗。
僕のサッカー漬けの日々はこうして幕を閉じた。
プロローグ END
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