自己流読物

□病女、拾いました。
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帰り道、女の子が
落ちていたから
拾いました。





『病女、拾いました。』





「あの…そろそろ終電あるんで帰っても…………。」


今日で何回目かのこの
台詞。

「え?いーじゃねーかよ!終電の心配なんかしねぇで飲め飲め!!」

今日で何回目かのこの
台詞。


このやりとりはもう
やり飽きた。



俺、『榎本樹』は
○△大学心理学科1年生だ。

そして、今現在。

俺は大学の心理学科新入生歓迎会に参加している。

大学に入ればやっと静かに
勉強ができると
思ったのにな。


どうやら、心理学科にいる先輩は、俺とは真逆の性格を
しているらしく、

人と関わりたくて
仕方がないらしい。


そして、俺は
そんな酒臭い先輩たちに
糞みたいな居酒屋で
永遠に拘束されている。

かれこれ10時間はいるな。


あ、縛られるって
荒縄で縛られるとか、
そーゆーSMまがいの
意味ではなくて、

帰れないってこと。
帰してくれないって意味。


俺は今更ながらこの
学科を選考したことを
後悔した。



元々、俺は人付き合いが
大の嫌いだ。

苦手じゃない、嫌いなんだ。


何でこうも馴れ合いたがるかなぁ?

人間どうせ最後は一人なんだから、
…………最初から
一人の方が、いい。
俺はそう思って、
それを実現させるために、
心理学を学び、

人と最小限の馴れ合いで
済む道を作り上げようと
思った。


ただ、それだけなのにな。
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