NOVAL

□summer love
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「熱い…」
正しく夏。”お盆”という時期だ。天気予報では外気温三十七度と言っていた、馬鹿げている。体感温度では四十度を軽く超えてしまうではないか。こんな暑い日は外に居るだけでも不快なのに、テレビでは不幸なニュースに事欠かなくて、それがまた不愉快にさせる要因となる。
半袖のワイシャツにスラックス、青のネクタイと言う探偵時使用の服装の透は、顰め面全開で少しでも暑さによる不快感を拭うべく、首元のネクタイを緩めつつ我が家へと続く道を闊歩していた。事件の解決後、居合わせた高木刑事が車で送る、と言ってくれたのだが、高木刑事は本当なら非番らしく、安月給の忙しい公務員の偶の休みを削っては申し訳なかろう、と遠慮しておいたが、やはり好意に甘えて涼しいクーラーが効く車で送ってもらえば良かったと、先程から何度も溜息を吐いている。

本日二回目の外出から帰宅した透は、自宅を目にして車庫に母の愛車が無いことに気付く。
「母さんと夾は出かけてるのか…父さんは仕事だし…つーことは…」
スラックスのポケットから鍵を取り出し、重厚な扉を開ける。一家の主は有名脚本家、その妻は有名元女子アナ、息子もまた有名な高校生探偵のうちの一人。有名な一家とあってセキュリティは万全だ。玄関の扉もそれらの一つ。
中に入ると、良くクーラーの効いた涼しいリビングのソファで転寝する恋人の影を見つけて顰めていた顔を綻ばせた。気持ちの良い部屋で、すやすやとあどけない表情で眠る愛しい恋人。既に荷物になっていたジャケットを放り投げ、緩めたネクタイを外しシャツのボタンを外しながら、透は起こさないように気を遣いながらそっと近づき、そのふっくらとした桃色の頬に、勝手にただいまのキスをした。

「ん…」

零れ落ちた吐息が声にならずに溶けてなくなる。愛美は全く気付く様子が無く、未だ寝息を立てている。ゆっくりと上下する胸は、キャミソールの薄い生地を押し上げて、その質感を何処か生々しく伝えている。愛美は大きい目とふっくらした唇と、守りたくなるような幼い顔立ちをしている。加えて細身なのだがしかし、出る所は出ると言う、所謂完璧なプロポーション。さらりと流れ落ち、肩にかかった髪の隙間から見える谷間が、胸の大きさが豊満だと言うことを示している。透は汗を流そうとシャワーを浴びる為に浴室に向かいながら、あのキャミソール一枚では絶対に外を歩かないように愛美に言い包めなければと考えていた。
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