NOVAL

□thirst
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喉が鳴る。

乾いているわけでもない唇が求める潤いは、単なる結びついた二つの元素ではなくて。
手の中のペッドボトルの中身を飲み尽くした所で、この渇きは癒されない。

真夏の太陽のせいか。一日で最も気温の上がる昼だからか。

熱に思考を奪われたように。
視線はただ一点に注がれて。
貼りついたように離れない。

友人に囲まれ、はしゃぐ声。
形の良い口唇から零れるソプラノはよく響いて、周囲の目を引き付ける。
「蘭っ、行くよー!」

健康的なピンク。艶やかなそれが言葉に合わせて動く。その様に反応して。

一際大きく喉が鳴った。
欲しい、と本能が言う。
言語も感情も超えた所で。
目眩さえ覚える程の、強い。

ただ、その唇に触れたいという明確な欲望だけ。
それがこの熱の正体。


渇きの原因。





「……………愛美」


絞り出した声が掠れていたのは、きっとこの熱と渇きのせい。
 

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