NOVAL

□終わり
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見てしまった。

見る、つもりはなかった。

けど、

見てしまった。

彼と、かの巫女との情事。

分かっては、いた。

二人には私が立ち入ることのできない過去があるという事。

それは重々分かっていた。

分かっていて、傍にいると言った。

いさせて、と。
けれど――――――

溜めていた透明な瓶が溢れて、溜めることはもうできず、溢れたものを零すだけ。


皆で野宿していた場所から、一人荷物を背負い旅立った。
行くあてなど、どこにもない。
向こうへ帰れば間違いなく彼は私を探しに来る。
だからあえて向こうには帰らない。
きっと彼はあの人に夢中で私になど気づかない。
まだ朝焼けの霧がかかるスギ林の中を、一人歩き始めた。

前から分かっていたこと。

でも・・・・・・・・・・・・


それでも辛かった。

歩くたびに、地面に雫が毀れた。

止まる気配は無い。

止まらなくてもよかった。

枯れるまで、毀れればいい。

枯れて、消えて、無くなるまで。


さまようように、


一人


静かに


歩いた。

この世界にはあの彼以外には頼るものなど・・・
あの仲間と、帰りを待つ老巫女とその村と・・・・
それしか無かった。

だから私を知っている人など・・・到底居ない。

それ以外に頼れる人は全てあの彼につながっているから、頼ることもできない。

私が行きつく場所は・・・

絶望しかないの

好きだった。

心から。

愛しくて

大切だった。

だから、

辛くて

離れたかった。

これ以上私を惨めにさせないで。




――――――――お願い――――――。
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