NOVAL

□requiem
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犬夜叉の初恋の相手であり、
私・日暮かごめの前世である、
黄泉返りの巫女の桔梗は先日の
あの奈落消滅まであと少し、
というところまでいった戦いで、
奈落の瘴気に蝕まれ私や犬夜叉、
みんなの努力も虚しく亡くなった。

弱い所を見せないようにする犬夜叉の
生来の性格か、桔梗が亡くなったことに
関して「傷ついていない」かのように
本心を見せないように振る舞い、
逆に私達もそれを察して犬夜叉を
傷つける言葉や仕草をしないように
振る舞った、ぎこちないこの数日間。

私の手には、桔梗が手にするはずだった
梓山の大弓があり、「これがあれば助かる」
と言っていた桔梗なのに、
だから命がけでも言ったはずであるのに、
桔梗を助けられなかった。

「かごめ、後はお前が…」

桔梗、私は犬夜叉と出逢って、
あなたとも出逢って。
私と犬夜叉の関係と、あなたと犬夜叉の
関係を知ってどれだけ嫉妬した事か。
犬夜叉が私だけを見てくれたら、
あなたが居なかったら。
居なくなったらそれはどれだけ楽だろうと、考えてはいけないと知りつつも、
ずっと心奥底にあった想い。
それが今、叶ったというのに、あなたが
居なくなったら「居たらいいのに…」と
心奥底から思うなんて、
私は虫よすぎるわよね。
夜、皆でたき火を囲んで寝ていると、
犬夜叉1人そこからそっと離れて、
ずっと夜空を眺めているの。桔梗、
あなたを見ているの。
鼻が聞く犬夜叉なのに、私が後をつけて
盗み見ている事に気が付かないほどに。
遥か予想以上に、犬夜叉にとって私に
とって、弥勒様や珊瑚ちゃん、鋼牙君に
とっても大きな存在である事を知ったわ、
桔梗、あなたを。
自分を励ます事も、みんなを励ます事も、
犬夜叉の傷を癒す事も私にはできないの。
そのためにいるはずの私なのに。
私が傷ついた時は、皆が、犬夜叉が励まし、傷を癒してくれたのに
犬夜叉が傷ついた時に、癒すことは愚か、
励ます事でさえできないなんて。
私は、犬夜叉の側にいる事…
意味ないのかしら。
巫女失格かも。
桔梗、あなたならどうする?

桔梗、私、
どうしたらいいの―――――――――?
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