NOVAL
□抱きしめる
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一行はその日、いつものように四魂の玉の欠片と奈落の手掛かりを求め、旅をしていた。
だが村々を渡り歩き、その地の者にそのことを訊ねてみても、何の手掛りも掴めず、途方に暮れていた。
犬夜叉が思うように奈落に関することを掴めず、苛立ちそれを弥勒が優しく諭す(殴る)所で、一番年少者の七宝がぐうの音をあげた。
「もう、おら疲れた!なあかごめ、少し休まんか?」
先程から歩き詰め、さらに休憩もなしに半日経っていたため、七宝が弱音を吐くのは当然だ。
しかし、七宝が休もうと言ったのは、自分を抱いて歩くかごめのためでもある。
「そうだね、かごめちゃん疲れたろ。少し休もうか?」
「え…でも、今日はもう少し…」
自分が疲れている事は棚に上げて、先頭を歩く犬夜叉を気にしてちらりと見る。
犬夜叉は手詰まりの苛立ちから、先に進むことで頭がいっぱいなハズだ。
「いいよ、あんな体力バカ気にしなくて。」
犬夜叉を気にするかごめに珊瑚が囁き声で呟く。
犬夜叉に聞こえないように珊瑚は耳元っで囁いたのだが、苛立つ犬夜叉はいつもよりも神経を尖らせていて、珊瑚の言葉を聞いていた。
「誰が体力バカでい。」
「さあ」
珊瑚があっけらかんと答える。
「一番体力のあるお前に付き合っていたらこちらが駄目になる。かごめ様、お気になさらず一言どうぞ」
弥勒が最もなことを言うと、背後に居たかごめを犬夜叉の前に連れて行かれる。
「な、なんだよかごめっ。やるってのか?!」
「犬夜叉。」
「…なんでい」
「お座り」
「ふぎゃっ!!」
犬夜叉の首にかかる勾玉達が光ったかと思うと、額から犬夜叉は地面にたたきつけられた。
「ではかごめ様。一休みするとしましょう」
「ありがとう、弥勒様」
弥勒の思いやりに感謝の言葉を述べたのではなく、お座りによって伸びた犬夜叉を抱えた(引きずって)木陰を探そうとする弥勒に感謝したのである。