NOVAL

□春よ、来い
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桜舞い散る、心地よい小春日和。





「♪、♪〜」


珍しくもない、何時も通りの光景。


少し、犬夜叉より少し起きて、朝餉の支度を始める。
お味噌汁の具が煮えて、匂いが立ち込める頃
犬夜叉を起こす。
あの頃は一番に起きて、皆起きるのを急かしていたのに、今は起きるのをいつも渋る。
結局支度が揃うまで、犬夜叉は布団から出ない。
仕方がなく布団を剥ぐが、犬夜叉は目ざめの口付けだとか馬鹿な事言って、私からキスをするまで起き上らない。
額にキスをしてやって、起き上った犬夜叉と朝ごはんを食べる。
満足そうにお腹をさする犬夜叉を背に、朝御飯の片づけをしたあと、
訳あってクタクタになった布団をおもてに干す。
晴れている日は、昨日の洗濯物を小川で洗って干す。
妖怪退治の依頼がある日は、この時間帯に支度を整えた弥勒様が犬夜叉を迎えに来て、遠くの村へ退治遠征しに出かけて行く。
犬夜叉を見送った後、楓ばあちゃんの小屋に顔を出して、今日の予定を聞いて、言付けをこなして昼を迎える。
この時代は昼御飯が無いから現代人だった私にとっては少々きつい。
だから果物だったり朝餉の残りの味噌汁だったりを一人口にして、再び作業を続ける。
午後になると、私は竹籠を抱えて森や野原に出かけて、楓ばあちゃんに習った薬草を摘む。
摘みながらあれこれ考えている内に、夕方になって遠い村じゃなければ退治をし終えた犬夜叉が、遠い村だと私を預かり受けた珊瑚ちゃんが、私を迎えに来る。




今日は、それほど遠い村ではないから私を過剰に心配する犬夜叉が飛んで帰ってくるハズ。










「こんな桜見ると、春よ来いって思い出すな― 唄いたくなっちゃう」

薬草を摘む手を止め頭上から己に降り注ぐ桜の木を見上げる。
散る桜花を見ていると、井戸の向こうの世界で習ったり聞いたりした曲を思い出しやすい。

脳裏に思い浮かんだ曲を紡ぐ







「淡き光だつ俄雨 愛し面影の沈丁花…」
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