NOVAL

□虫除け
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初夏、夏の風物詩・蝉の鳴き声が鬱陶しくなってきた頃。

帝丹高校は夏休み前、前期期末試験の最終日を迎えていた。

ほくほくと顔を綻ばせる生徒もいれば、この世の終わりのように真っ青な顔の生徒が居るのは今日である。

3-Bの前述者は工藤新一、後述者は毛利蘭と鈴木園子であった。

特に園子は全般的に並にはできるものの飛び抜けた科目はない。そのためこれだ!という自信のあるテストはなく、最後の科目の英語を提出すると机に突っ伏し大きなため息を吐いていた。

「イケてねー、何もかもイケてねー」

「なんか前よりも一段と難しくなってるよね。」

前の席の蘭はそう答えた。
夏明けには大学受験が本格的にスタートする高校三年生は、志望校を判断するため、それまでのテスト内容とは格の違うものであった。

「でも蘭は国語とか得意じゃない。あたしは…」

「数学がぜーんぜんだめ!あ、でも理科は新一に教えてもらったから何とか出来たよ!」

途方に暮れる園子を尻目に、隣の列の新一に蘭は話をふった。
テストの出来映えか、蘭からの信頼の嬉しさか、上機嫌な新一は笑顔の蘭につられて笑顔になった。

「どーせあんた達は二人っきりで手取り足取り教えあっていたんでしょーね。」

皮肉混じりに園子が言う。

蘭が口を尖らせて弁解した。

「園子もどう?って聞いたじゃない。園子が行かないって言ったのよ」

「あんたらのラブモードに1人で耐えられる気力がなかったのよ。それに…」

恨みのこもったジト目を新一に投げる。
ただでさえ仕事や勉強に追われて、蘭と過ごす時間が少ないのに、園子に邪魔をされては堪らなかった。
園子はそれを察していたのだ。

「でも蘭と少しは勉強したんだろ?」

「前の時より少なかったけどね!勉強中も貴男からのメールが邪魔してたけど!」

「…オメーにメールしたわけじゃねーんだからいーだろ」

「最近いっつもそうよ、あたしが蘭と遊んでるとき、すーぐ、新一君が邪魔してくるんだから」

「…確かに新一よく連絡してくるよね」

「オメーまで同意すんなよ」

「リア充するのもいいけどね!親友との交遊も必要なわけ!蘭、海行こう!」

唐突に園子は提案した。

「あ、この間言ってたリゾートアイランド?」

「そうそう、お父さんに頼んだら予約してくれちゃった」

「やったぁ、海!」

新一を置いてけぼりにして、彼女等の会話はどんどん進む。
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