NOVAL

□stairs
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いける。
やってやる!


まさに二人がすれ違おうとした瞬間、透は長い腕を手摺に着き力を込めると、跳び箱の要領で上りエスカレーターに飛び乗った。

「は、半田君!?」
ぎょっとしたような目暮警部の声が見る見るうちに下方に運ばれて行くのが聞こえる。目の前にはまさかこんな展開になるなんて思いもしなかっただろう愛美の、零れ落ちそうな見開かれた目。得意げに小さく笑い、さらりと流れ落ちている髪を一房手にして、もったいぶって引っ張った。愛美はもう、降参の表情で苦笑している。
「フレンチはまた別の店探しとく」
「良い。別に。…今日、おごってね」
語尾に少し茶目っ気を覗かせた、愛美の最大級の笑顔が在る。エスカレーターを降りると透は愛美の手を取りそのままデパートを後にするべく、下りエスカレーターに乗る。後方で呆気にとられている奴らなんて気にしない。

奈海があきれたように仲無妻じい二人に声を投げた。
「何処へなりとも、愛美の事攫って行きなさいよ。全くもう!やってらんないわよ、暴走探偵さん!!」
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