NOVAL

□oneside-love
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遮光カーテンを開けて自由になった純白のカーテンが、風に揺れる。
「…?」

ふと、最後のページの後書きに、何か挟まれているのに気づく。
しおりと言うには大きすぎて薄い、そんな髪が挟まれている。カーテンと同じく、しなやかな髪を靡かせながら、呼んでいたページを覚えてその後書きの部分へ捲る。後書きと言うからには勿論、この小説の筆者の言葉が並んでいるのだが、その最後のページに挟まれた其れを目にして、愛美は目を丸くしてしまった。

この本は、恋愛小説の類を好む奈津子が集めた中の一冊で、以前母の読書の趣味について「母さんの本は一度も読んだ事が無いが、全く興味が湧かない。別次元だ」と呆れるように言っていた。自分自身、透がこの類の小説を読もう!という気になるなんて到底思わない。一緒に書庫で読書をしていた時も、愛美は同じく恋愛小説の一冊に手を伸ばしたが、当然の如く透は推理小説に手を伸ばしていた。読んでいた記憶が無い。
 つまりは、誰も見ていない時に、一人で書庫に入り、こっそりとばれないように読んでいたということか。映画化の時に購入した、と奈津子が行っていたが、この本だけ同時期に買った本よりもページに癖がついている。つまり奈津子以外に読んだ主が居ると言う事で、それは自分が此処へ居候する前の話だ。透だと言いきれるのは、この”写真”、透が持ち主であると言いきっていいものだからだ。
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