NOVAL
□rely on
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「・・・・・・ごめん。透の時間、取っちゃったね・・・。」
もう一度『ごめんね』とだけ言って、愛美は台所へ入っていった。
そのときの愛美の哀しそうな笑顔のわけが、俺には解らなかったけれど。
「はーあ。折角集中して読んでたのに、中断しちまったぜ・・・。」
中断してしまった読書を続ける気にはなれず、俺はソファーの上で、うーん、と伸びをした。そして、ぽふ、とソファーに沈み込む。
「・・・コーヒーでも飲むか。」
コーヒーを淹れようと、身体を台所のほうへ向けた。
──その時、俺の瞳に映ったのは。
「・・・え?」
コーヒーが一人でやってくる様子でもなく、ましてや愛美が料理をしているところでもなく・・・・・
・・・・・・愛美が、高いところから、背伸びをして食器をとろうとする姿だった。
「・・・・・・・・・」
呆然と愛美を眺める俺を他所に、愛美はなんとか取れた食器をテーブルに並べると、パタパタとスリッパをならし、リビングを出て、書庫へ向かっていた。
リビングのドアから見える位置にある、書庫の隙間から見えたのは。
・・・・・愛美が、重たい本の整理をし何回も何回も本を運んでいる姿だった。
「・・・・・・・・・」
呆然と見つめていた俺は、我に返って、慌てて愛美を止めた。
「お、おい、愛美っ。そんな重てーもの・・・・・・・・・」
「あ、透・・・。大丈夫だよ。私だってこのくらい。」
ニッコリと笑って言われて、返す言葉をなくした。