NOVAL
□rely on
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背が届かない高いところから、無理してモノをとる、女の愛美。
重たく、運びにくい本を、何冊も抱えて運ぶ、女の愛美。
──―ソファで、好きな読書を楽しむ、男の俺。
なにやってんだか、俺は。
「もしかして・・・・・・さっき愛美が俺に声かけたの・・・これ、手伝ってもらう・・・ため?」
「・・・うん。でも、頼りすぎだもんね、私。これくらいのこと、自分で出来なきゃダメだよね・・・。」
さっきと同じ哀しそうな笑みをした愛美に、俺はやりきれない気持ちになった。
愛美のあの顔は・・・これの所為だったんだな・・・。
「・・・・・・そういう時は、頼っていいんだよ。」
「・・・でも、透は『うるさい』って顔してたじゃない。」
「い、いや・・・俺はてっきり、またくだらない話かなー、と・・・・・・」
ハハハ・・・と苦笑いしながら、俺は話していた。
「・・・私は、本運ぶの手伝ってもらえると嬉しいな、って思ってたの。・・・でも、自分で運べたから。」
またもやニッコリといわれて、俺は慌てて言葉を発した。
「けどさっ、怪我でもしたら危ねーし・・・・・・」
「・・・・・・あんだけイヤそうに言っといて?」
「・・・・・・・・・」
俺は言葉に詰まってしまった。
確かに、俺は読書を中断させられ、イヤそうな声を発していた。
愛美が、溜息をつきながら、慌てる俺を見ていた。
「・・・もう、いいよ。私が透を頼らなければすむことだし。」
「えっ?!」
「何でも自分ひとりでできる様にならなきゃね、これからのためにも!」
それって・・・・・頼ってくれなくなる、ってことか!?
「だ、ダメだっ!!」
「?どうして??」
どうして、ってそれは・・・・・・
「俺が頼って欲しいから。」
「・・・・・・・・・自己中」
「・・・・・・・・・。」
だってさ、頼られる、ってうれしいんだぜ?
頼られると、守ってる、って感じもするだろ?
「あ…愛美?」
隣の愛美の様子を、盗み見たけれど、愛美は俯いたままで、表情はわからなかった。
「ありがとう。」
「え?」
「頼らせてくれて、ありがとう。」
華が綻ぶような笑顔を見せてくれて、俺の心臓はドキッと音をたてた。
そんな愛美の笑顔は、なによりも綺麗だった。
俺は、段々と大きくなる心臓の音を隠しながら、平然とした振りをして、そして、ポツリと呟くように言った。
「俺以外には、頼るんじゃねーぞ?」
「え?」
「・・・愛美が頼っていいのは、俺だけだからなっ。」
「・・・うんっっ。」
──なぁ、愛美。
愛美がいなかったら、ダメなのは俺のほうだ。
なにもかも、頼りすぎてるのは、この、俺だから。
・・・だからさ。
俺にだって甘えてくれよ?
愛美のためだったら、なんだってやってみせるからさ。