NOVAL

□終わり
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どれほど時間がたったのかは分からない。
皆が寝静まってから束の間、夜空に青白く光る死魂虫が見えた。それを追いかけ、桔梗を見つけ少し話して・・・

抱きあった・・・・・・・。


離れないよう、離さないよう。
まるでそれまでの時間を埋めるように。
あの時恋い焦がれた彼女の身体からは、以前と変わらない懐かしい匂いがした。
けれどそれに加わって死を感じさせる、墓土と骨の匂いがした。
自らの体温の高さが分かる。桔梗の血の通わない、紛いものの身体は、とてもひんやりとして冷たくて。
50年という時を感じさせ、己を罪悪感に駆り立てた。
それまでの時を忘れられれば、と、償いの感情で
桔梗に口付をした。

「犬夜叉・・・・」

胸の中で悶える彼女が恐ろしいほど美しく・・・
だがその面影に、いつも傍にいる少女を想わせた。
突き果てぬ、悩みの感情をそのまま、口付をたくさんした。

その様子を

全て

その少女に、

護りたいと

誓った少女に

全て

見られていたなんて、

知りもしなかった。

どれほどの時間が経ったのか。 朝日が顔に掛かった。
すっ、と桔梗の身体が犬夜叉から離れた。
「桔梗・・・」 今、自分がどんな顔をしているのか、想像したくなかった。
それに反して桔梗は顔色一つ変えないのが、堪らなく悔しかった。
「もう・・・仲間の元に戻れ。 かごめが・・心配しているはずだ。」
・・・かごめ・・・・
仲間の眠る方向を見つめた。 どんな顔をするだろうか、かごめは。
また・・・眠らずに俺を待っているのか? 笑顔で・・・・出迎えるのか?
なぁ・・・・いつから本当の事、言わなくなった?

振り返れば桔梗はもう姿を消していた。
「桔梗・・・」 
踵を返し、少女のもとへ向かう。

いつもより遅い、スピードで。

あいつを傷つけないためにも。

ちゃんと目を見つめてやらなくては。

だから、何事もなかったかのような顔で。

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