NOVAL

□requiem
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「奈落の匂いが強くなってきた!
 あと少しだ!」
林の中を抜ける一行の犬夜叉の鼻に、
奈落の匂いが一段と強くなる。

「奈落のやつ…わざと匂いを
漏らしているのか!?
今まで匂いなんか…してこなかったよ?」

雲母に乗る珊瑚が呟く。

「ああ… 奈落の奴。 私達をわざと
招きいれようとしているらしい!
皆、気をつけて!油断するなよ犬夜叉!」

しかし、そんな弥勒の忠告も頭に血が
上っている犬夜叉の耳には届くはずもない。
先頭を突っ切る犬夜叉が林を抜け
視界が広がる。
暗い林の中から、一気に明るみに出ると
眩しくて目が眩む。
やっと眩しさに目が慣れてくると、
そこには黒い布を被った奴が立っていた。

「誰だてめぇ?」

警戒した犬夜叉が鉄砕牙の鞘に手を掛ける。

「犬夜叉…ここからは通さない。」

顔は見えないが、恐らく人間。
その奥には、奈落が見える…しかし奴が
前に進み出て奈落に切りかかろうとする
犬夜叉を制する。

「奈落! 隠れてね―で出てきやがれ!」
「犬夜叉、きさまの相手はこやつで十分だ。
 きさまにはこやつに手出しは出来ん…。」
「ああ? こいつがか…?
 そんな風には見えね―けどなっ!!!!」
それを合図に犬夜叉が刀を抜き、
そいつに切りかかる。
脳天から切ろうと、鉄砕牙を飛んだ頭上から犬夜叉が思い切り振りおろす。

「らぁっ!!!!!!」

間一髪相手は避け、鉄砕牙が地面に
鈍い音を立てて突き刺さり、地面を砕く。
奴の足元にある、黒い布が刀によって
千切れている。

「犬夜叉!」
後方にいた弥勒と珊瑚が加勢しようと、
奈落へ近づいた。

「このぉっ!!」
珊瑚が雲母の上から飛来骨を奈落めがけて
投げたがしかし強力な結界により飛来骨は
破られてしまう。
弥勒が珊瑚の後ろから破魔の札を結界に
向けて放つ。
結界は敗れたものの、弥勒の攻撃に一つも
動揺しない。

「犬夜叉、外野が五月蠅いようだ。
…戦いやすくしてやろう。」

奈落が放った妖怪たちが弥勒と珊瑚、
七宝、雲母を囲む。

「弥勒、珊瑚!!」
助けに行こうと走ると、奴がその道を防ぐ。

「気にするな、犬夜叉!」

取り囲んだ妖怪たちは一つの円になり、
2人と2匹を結界の中へ取り込んだ。
外から奈落が妖怪を結界に向けて
再度放ち、結界を強くしていく。
外から結界は通れるが、内からは破れない。
弥勒達に攻撃するつもりは奈落には
ないようで、人隅に追いやられている。
犬夜叉はどうにか弥勒達に
近づこうとするが、奴が邪魔をする。
だが一つ犬夜叉が攻撃をしてしまえば、
奴は容易いのだが…。

「てめえ奈落! こいつ、
てんで強くねえぞ!
 何が、こいつで十分だよ!?」

奥にいる奈落に言い放ったつもりが、
既に奈落はいずこかへと去っていた。

「ちっ、こいつも捨て駒ってわけか…」

今までにも奈落の作った分身たちとも
出会ってきた。
中には今でも生きながらえている奴らも
存在するが、分身のほとんどは
出会ってすぐに倒している。奈落も
分身たちをたいして重要視しておらず
策略の中で相討ち、殺す事を何の痛みとも
取っていない。
この目の前に立つ人間もきっと…。

「倒す前に、テメェの顔見ておこうか!!!?」

犬夜叉が手の指の節を鳴らし、
牙を尖らせる。
思い切り振りかざし、奴の顔部分の
黒い布を剥ぎ取った。
顔を見られてはまずいのか、
奴は始めは腕で顔を隠していた。が、
何度もの犬夜叉の攻撃に、顔を塞ぎながらの防御では先ほどよりも危うくなり
等々覆っていた腕を離した。

「ちっ、大した事ねえな……!?!?!?」

威勢良く放とうとした刀は振り下ろす所で
止まってしまう。
鉄砕牙は、大切な人を護る刃…。 
錆び刀に戻ってしまった。




そう、目の前の奈落の手下は…………

「かごめ……」

奈落に囚われているはずの……かごめ。
犬夜叉には、手出しできない……………。
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