NOVAL

□despair&hope
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楓の応急処置が終わると、皆の計らいで
小屋の中には犬夜叉とかごめの2人きりに
された。
今頃楓と七宝は村へ出向いて、
珊瑚と弥勒は2人で散歩でも
しているのだろうか。
かごめは疲労からか、眠りについていて
安らかな吐息が規則正しく小屋の中に響く。
それ以外に、音が無いからだ。
犬夜叉はかごめの手を握ったまま、
痛々しい少女を見つめている。

どうしたらいい、俺は…

気づかないうちにかごめを俺は
気づ付けていた。

目覚めたらかごめは何と言うだろうか。

拒絶?許容?

存在すら肯定しないだろうか。

「かごめ…」

再びその名を呼ぶと、かごめの眉が
ピクリと反応した。
犬夜叉が握っていたかごめの手に、
力が籠る。
かごめは一度大きく空気を吸い込むと、

「ん…」

ゆっくりと目を開いた。
黒目が左右に動き、真横に座る犬夜叉を
捕える

「犬…やしゃ…?」
「かごめ! 俺を…」

驚くべきことに、奈落に操られ犬夜叉を
殺そうとして居た時の記憶はかごめの
頭の中に一欠けらも残っていなかった。
自分がなぜ、舌を噛み斬ろうとした事も。
それは犬夜叉にとって幸いというべきか
否や…

「犬夜叉、怪我、してない…?」

恐らく花皇との戦いでの怪我を
案じているのだろう。
力なさげにほほ笑むかごめは、犬夜叉を
心配させまいと、また犬夜叉を心配して
そう言う言葉を犬夜叉に投げかけたのだが、犬夜叉には酷だった。
かごめの優しさと心の広さが、
今回の一件を大きくしてしまった。
犬夜叉の桔梗を失くした辛さを
知っているから何も言わない。
自分の想いよりも先に、犬夜叉を優先して
心の陰りを感づかれない様に、隠して
微笑む。
いつまで経っても犬夜叉の心から
消えない桔梗の面影を知ったりして
いくら傷ついても、何も言わず犬夜叉が
弱音を吐けるようにいつでも待っていて。
そんなかごめだから、沢山の傷を溜めて
奈落に魅入られたのだ。
そしてすべて、犬夜叉によって穿たれた傷。
かごめの性格は犬夜叉や仲間を和らげ、
犬夜叉は好きになったのに
性格ゆえの痛みがある事を、犬夜叉は
気づけなかったのだ。
だから、その微笑みが原因かと思うと
犬夜叉は泣きそうで堪らなかった。
かごめが微笑んでいるのだから、
こちらも気丈にいつも通りに返して
やらなければならないのに
今はとてもできそうになかった。

「ねえ、みんなは?」

泣きそうな顔でただかごめを見つめる
だけの犬夜叉に、かごめが話しかける。

「あ、ああ。今は、皆休んでる…」
「私に遠慮したのね…
 悪いことしちゃったわ。」

ほら、そうだ。
自分の置かれた状況も十分知っている
筈なのに、それでも他を優先する。
そう言う所が、マイナスになって行くのだ。

「そんなことねえ、たまにはお前も皆に
甘えていいんだぜ。」
「でも、妖怪退治とか私無力よ、
守られてばっかりで。甘えてるわ十分に…」
「そういう意味じゃなくてよ…」

かごめの頭を、いつか自分も母親にされた
様に、優しく撫でてやる。
犬夜叉のいつもとは違う様子にかごめは
困惑しているようだが。

「内面的な意味だ…
弥勒たちならこう言うぞ、かごめ様は
本来四魂の玉を探すためにここに居られる
かごめ様がいなければ我々は探せませんし、元々一緒にいませんよ、ってな。」
「そうだけど…」
「だからいいんだ、甘えて。」

頼むから、そうしてくれ。
と心の中で叫んでいた。

「わかった。じゃあ一つ
 我が儘言っていい?」

甘えるのと、我が儘は少し違うと思うが…
かごめが望むなら仕方がない。

「なんだ?」

「一人でいいから、川辺に行きたいの。」
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