NOVAL

□Boy's talk
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独りになり、暗闇の天井を見上げる。
天井の壁紙の模様を目でたどる。
寝ようとリビングの電気を消してから
時計の短針は一回りしてしまっていた。

空を見つめるその瞳の奥に映るのは
愛しい愛しい彼女の他ならない。

新「蘭…」

小さく、彼女の名を呟く。
もし目の前にいたとしたら、
透き通るような黒髪を靡かせ振り返り、
きらきらした眼で
俺を見つめて「なあに?」と
天使の声を俺の耳に届けるだろう。

今日も昨日もその前も
些細なことで怒らせて、思い描いたような
笑顔はふりまいてくれなかったけれど。

独占欲が強くて、他の男達と仲良くするのが
とても気に入らなくて怒るくせに。
自分は殺人事件だ誘拐事件だと
日本中飛び回っている。
――――虫の良い男
―――――最低な彼氏
そんな事は重々分かっている。
気持ちを押しつけるくせに、肝心な時に
貴方はいないのだといつか言われた事が
あるけど、
その分愛情は注いでいるつもりだ。
気づいているかどうかは置いておいて。

新「会いてえよ…」

昨日は目暮警部に呼び出され警視庁へ
一昨日は中森警部に呼び出され
キッドの予告現場へ
その前の日は毛利探偵と殺人事件の起こった
地方へと出向き…
電話やメールは一時も欠かさなかったが
どんな言葉を受信メールや受話器の
向こうから聞いても、
この手で触れ抱く幸せには変えられない。
ここ数日間触れられなかった
男の性というべきその感情をどこにも
ぶつけられず、ただ彼女を脳裏に
浮かび上がらせながら瞼が重くなる事を
祈る。
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