NOVAL

□あたしの彼氏は
1ページ/5ページ







私、中森青子

名前の由来は生れ月である9月の誕生石が「サファイア」だったから。



江古田高校に通う女子高生です。
お母さんは昔、病気で亡くなっています。
お父さんは警視庁捜査二課のキッド専属刑事。
忙しい毎日を送っていて、あんまり家に居ない。

特殊と言えば、特殊かもしれない。



2人家族で、親が国家公務員だと、あんまり家に居ないから一人ぼっちじゃん、って思うだろうけど、あんまり寂しくはないのよ。

私には昔から幼馴染がいる。
同い年の男の子。
「黒羽快斗」って言うの、年の割に幼くて意地悪だし、直ぐ苛めてくるし、頭とか運動神経は良いのに女子更衣室覗くような変態まがいな事もするし。
兎に角ハチャメチャな奴なの。
だけどね、名前聞いて皆ピンとこない?
そう、彼はね故人だけど世界的に有名なマジシャン「黒羽盗一」の一人息子なの。
あんまり息まいてないけど、多分、お父さんの跡を継いでマジシャンに成りたいんだと思う。
偶に見せてくれる、マジックは日を追う度上達してる気もするしね。



そんな騒がしい彼と、彼のお母さん・千影さんという黒羽家に幼少期はほぼお世話に成っていた。
今の私は黒羽家ありきとも言えるの。




最近快斗のお母さん・千影さんは長い海外旅行に行っていて、快斗もほぼ一人暮らし状態が続いている。
小母さまに任されたってこともあるんだけど、快斗の食住の世話、私がしてるの。
朝ごはん作って持っていったり、朝起きないからモーニングコールしたり、夕ご飯だって作るし、快斗が出来ない掃除洗濯だってしてる。
(恵子に家政婦並みねって言われたけど)
まあめんどくさいけど、でも嫌じゃないよ。
だって、好きな人の傍に居られる口実じゃない?めったにない事だもん、と思ってやってる。


それはね、快斗も同じみたい。


意地悪してからかってばかり来る快斗だけど、それが小学校低学年の男子に良く見える「好きな子を苛めたくなる」っていう現象だと最近分かった。

ちょっと前くらいから、何となく「付き合ってるのかな?」っていう時期があって。
周りからも、自分から見ても前とは違って、二人の間の時間が濃くなってたの。
でもそれは、どちらから告白したとかデートしたとかそういう関係めいたものが無くて、快斗も言わないし、良く分からなかった。


でもね、
快斗から、「俺と、付き合ってくれるか?」って言ってくれたの。

勿論答えはO.K.






それから2カ月ほど。
そりゃ本格的に付き合い始めて、「付き合ってます」って公言したから周りの反響も変わったし、
二人で居る時間を大切にするようにはなった。
し、快斗も少し優しくなった。
だけど根本的な所は変わってないんだ。
“幼馴染”だから二人で居る時間というのに壊せない基盤がもう既にあって、変わらない。




凄く凄く幸せだと思う、青子。
思うんじゃなくて、幸せを噛締めてる。
















だけどね、一つだけ不安があるの。



付き合い始めて2カ月、生まれ出た不安。
快斗に対する不安。





数ヶ月前から日常化していた、快斗の家に行ってご飯支度や掃除洗濯をする用。
付き合い始めてからも、其れは続いていた、んだけど、お父さんが仕事で帰って来ない日は快斗が「家に泊まってっていいよ」って言う。
勿論一人じゃ寂しいから、言葉に甘えて泊まらせてもらうんだけど。
客室で寝かせてもらって、夜中トイレに立った時、ふと快斗の部屋を覗くと快斗が居なくて。
まさかと思って玄関の下駄箱を見たら靴が無くて。
翌朝目が覚めると、寝る前そうだったようにベッドの上に快斗が居て。
別に何の気なしに「昨日深夜出かけた?」と聞いたら「寺井ちゃんとこ行ってた。」と快斗は応えて。
別にそれらしかったから、追及はせず。


だけど、全部違ったの。




偶々寺井ちゃんとスーパーで会った時「昨日快斗に在った?」って聞いたら「会ってない」と答えたの。





じゃあ、どこに行ってたの?
とも、聞けずに。
其れから何度か青子が泊まった中で、快斗は深夜忽然と姿を消していて。
翌朝に成るときちんと帰って来ていて。
決まって行き先は「寺井ちゃんのとこ」と言う。寺井さんは「来てない」と言う。

快斗を疑いたくないよ。
信じてるよ。
とってもとってもとっても大好きだよ。



でも快斗は、私に大きな隠しごとをしてる。
寺井ちゃんにも、私にも言えないような隠しごと。




















その頃は行き先も理由も分からなかった。
でも最近分かり始めた、たった一つと言う真実―――――――――――――
















快斗が居なくなる、其の日、翌朝。


ニュースと新聞には必ず「怪盗キッド現る」の文字。


居なくなるのは、お父さんが決まって家に居ない私が一人に成る日。












ちょっとずつ、「まさかね」なんて
思っていた心もあるけれど。
だって手品で警察や警備の目を欺き、目的を遂行する怪盗キッドとマジックを夢中になって練習する快斗と、似てる、って思ったことは何度もある。

前にお父さんだって、一瞬だけ見た怪盗キッドの顔を快斗だと見間違えたことがあるもの。






それに、快斗が何処かに行きたいと青子に言う時、其の場所がお父さんがキッドを待ちかまえている、つまりキッドの予告状に指定されていた場所であることが多くて。
偶々、だと信じたい。
最初は何も気にしてなかったけど、何度も続くと流石に疑いそうになっちゃう。







だから、快斗に「快斗はキッドなの?」って聞こうとしたことが何度かある。
聞こうと快斗の前に立っては見るんだけど、何時も怖くなってやめちゃう。
“違うよ”って言って欲しい。
そんなワケねーだろ、って、快斗の悪戯な笑顔で。
でももし、“そうだよ”って返ってきたら?
嘘を吐かれて、騙されたら?

怖いよ。

前に、「怪盗キッドなんて嫌い」「一生懸命やってる人を嘲笑ってる最低な人よ」って快斗に言ったんだ。



快斗が怪盗キッドだったら、青子、快斗のこと傷つけてることに成るよ。
青子のほうが何時までも気づかなくて、傷つけるような言葉言って、最低だよ。

何より、青子、肯定されたらどんな顔していいか分からないの。



快斗のこと好きで好きで好きで、やっと付き合い始めて、少し経って。なのに。
そんなことされたら、快斗のこと今までと同じように見れない。


青子、嘘吐かれるの嫌いだもん――――――






快斗が、良く分からない。
青子自身も、自分のことなのに分からない。





どうしたらいいの?
だれか―――――――――
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ