NOVAL

□花言葉
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パラパラと林の中を歩く一行に、空から粒がやってきた。


「やだ、雨だわ。七宝ちゃん傘さすからこっちにおいで。」


犬夜叉の隣を歩いていたかごめが、先頭を歩く七宝を呼んだ。
七宝は慣れた軽やかな足取りで、かごめの肩に飛び乗り、
カサとかいう奴をかごめと一緒に入っている。
弥勒と珊瑚も、かごめに手渡された傘を二人で入っている。


「犬夜叉も濡れちゃうから、一緒に入ろう?」


一人雨に打たれる犬夜叉を心配して、かごめがそう言った。
いくら半分妖怪の犬夜叉でもこの梅雨の時期の雨では風邪をひいてしまうだろう。
かごめの持つ大きな傘は犬夜叉も入れるように彼女が用意したものだった。犬夜叉が入れるようなスペースもちゃんとあるのに、かごめの優しさを生来の性格からか
素直に受け入れる事が出来ない犬夜叉は、


「へっ、そんな女子供が持つもん俺様が入れるかっ」

「でも、あたしの世界じゃ男の人でもさしてるよ。とにかく風邪ひいちゃうし…犬夜叉は相合傘したくないの?」

「相合傘? ってなんだそりゃ」


かごめの肩に乗り、雨をしのいでいた七宝がかごめの髪の毛の隙間から顔をのぞかせこう言った。


「相合傘とは、仲の良い男女が二人で一つの傘に入る事を言うそうじゃ。何でも、おなごの憧れらしいぞ。ほれ、弥勒と珊瑚のようにな。」


七宝が後ろを歩く二人を指さした。
これもまた、弥勒と珊瑚で使うようにかごめが現代から調達してきた大きめサイズの傘だ。助平の弥勒のせいで良い雰囲気…とは言い難いが、
相合傘の意味を知る珊瑚は、見るからに幸せそうだった。


「第一、 俺の体はてめーらと違って丈夫にできてんだ、余計な心配すんじゃねえよ」

「……犬夜叉、もっと大人になれ」


七宝が溜息をついたのも束の間、次の瞬間犬夜叉は地面にしたたか叩きつけられていた。
言霊・おすわりを放った、かごめの怒りの情の分だけ強く。
雨でできた水溜りに、思い切り顔を突っ込んでしまった犬夜叉の機嫌は右下がりだった。

元は犬夜叉が素直にかごめの言葉を受け入れないのが悪いのに、なぜか犬夜叉の機嫌が悪くなってからは、かごめが謝っていたのだから。


「もう犬夜叉、かごめちゃんを許してやんなよ、っていうかお前が悪いんだろ」

「そうです犬夜叉、おとなしくかごめ様と傘にお入りなさい」


とこれに似たような言葉を沢山2人から浴びされた後、
かごめの悲しそうな顔に根負けし、許すとともに犬夜叉は大人しくかごめの傘に入った。
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