■短編

□渡さない
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「あっちぃ…」

「暑いね〜」


静雄と新羅はパタパタと下敷きで扇ぎながら、ぐったりとしていた。


「…牛乳買ってくっかな」

「ホントに牛乳好きだね!」

「…まぁな」


買ってこようと席を立ち上がったと同時にバシャッと音がし、体がビショビショになった。


「……は?」

「あらら…」


静雄はわけがわからないが新羅は苦笑してこちらを見ていた。


「牛乳欲しかったんでしょ?」


声がした方へ振り向けば臨也が口角を吊り上げて笑っていた。

手に開封した牛乳パックを持って。

「どう?牛乳をかけられた気分は」

「……ざっけんな!」


机を持ち上げ臨也に投げようとするが静雄はピタリと止まり、新羅に向き直る。


「…新羅、服ねぇか?…牛乳くせぇ……」

「ごめん静雄、今日は体育も無いから代わりの服持ってきて無いんだ」

「だよな…。つか、ノミ蟲手前ふざけんなよ!後でぶっ殺す!」

「………」

「「?」」


急に黙りこむ臨也に、静雄と新羅は珍しいと思う。
おまけに臨也は静雄を見たままで静雄は「…何だよ」と少し警戒しながら言う。


「…失敗したな」


この臨也の一言が静雄に聞こえはしなかった。

――今のシズちゃんエロすぎでしょ……

臨也は静雄達にはバレないようにため息をはく。
今の静雄の姿は先程臨也がかけた牛乳のせいで服が透けて、肌が見えていた。
静雄は気付いていないが、教室の奴らは全員静雄を厭らしい目で見ている。
そのことに臨也はイラつく。



「おい臨也、次の授業移動だぞ」


そんな時、この微妙な空気を壊すかのように臨也と同じクラスの門田が教室に入ってきた。


「あー…、そうだったね」

「ああ、少ししたら行くぞ。つか…静雄大丈夫か?…臨也お前、やりすぎるな」

「まだ俺だって言ってないじゃん…まぁ、俺だけどね」

「たく…、静雄代わりの服あるか?」

「ねぇな」


キッパリと答える静雄に門田は苦笑しながら、ちょっと待ってろと言い、教室から出ていく。


「…?つか、くせぇ…」


静雄は不機嫌そうな表情をし、腕にもついた牛乳をペロリと舐める。
髪からはポタポタと牛乳が落ち、頬は暑さのせいで赤くなっているために厭らしくみえる。


「何だよ?」

「あはは、セルティを心から愛してて良かったよ!じゃなきゃ危なかったなぁ……」

「新羅、何言ってんだ?」


新羅の言葉に静雄はコテンと首を傾げる。
そんな静雄に「…普通、男がやったらキモいはずなのに……」などと意味のわからないことをブツブツと呟いていた。


「つか臨也、手前も何見てんだよ?さっさとこっからうせ……」
「体洗って来なよ。牛乳臭い」

「手前のせいだろ!俺だって」
「静雄、こっちこい」


いつのまにか教室のドアのところにいる門田。
苦笑しながら呼んでいるので、静雄はイラつく気持ちを抑え門田の方へ迎う。
すると門田は静雄の腕を掴み、部活動などの後で使うシャワールームまで連れていき「そのままじゃ臭いから洗ってこい」と静雄の背中をおす。


「けど、服とかタオル持ってねぇから…」

「服は俺のジャージを使え。タオルもあるから心配すんな」


ここに置いとくからな。とだけ言うと門田はそのままシャワールームを後にした。


「…礼、後で言わねぇとな」


門田の優しさに感謝しながら静雄は牛乳臭い体を洗った。
その頃、教室に戻った門田が臨也に自分のことで会話されていると予想もしないまま────。











────────────

続きます!










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