■短編

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「ドタチンって、シズちゃんの事が好きなわけ?」


牛乳まみれになっていた静雄をシャワールームにまで連れていった後、臨也達がいる教室に戻ってきた門田だったが、教室の入り口にいた臨也にいきなり質問された。


「何だいきなり…。」

やや呆れ顔で臨也を見たが一瞬で門田は真顔になる。

――まさか臨也が真顔になるなんてな……


「俺は真面目に聞いてるからちゃんと答えて」

「…好きというか、静雄を見てると母性本能がくすぐられるだけだ。好きとかではねぇぞ」


臨也の目を見てハッキリと言えば臨也は「ふーん」と言う。


「ドタチンであろうとシズちゃんだけはあげないから」

「だから母性本能だって言ってるだろ…、だいたいお前静雄の事を物のように言うな」


門田の言葉に臨也は口端を吊り上げ、妖艶に笑う。


「シズちゃんは俺のだもん」






*****








「何してんだ?」


先程の話のあと臨也と門田からは嫌な空気が流れお互いに黙っていたのだが、そんななかに門田のジャージを着た静雄が戻ってきた。


「あれ?静雄なんかサイズ大きそうだね」


トイレから(臨也と門田の空気に耐えられなくなって逃げて)帰ってきた新羅は、静雄のジャージ姿で変なところを言う。


「ぶかぶかだね」

「着れりゃ何だっていい」

「あはは!さすが静雄、アバウトな考えだね」



そんな会話をしていると、臨也が黙って静雄の方に来たと思うとそのまま静雄の腕を掴み走りだした。



「ちょっ、おい臨也!?」


門田達は呆気にとられたまま動かず、臨也は止まろうとしない。
静雄は意味がわからずそのまま強く腕を握られたまま臨也についていった。








*****








空き教室にまで連れてくると静雄をグイッと引っ張りこみ、中に入れたらすぐにドアを閉め鍵をかけた。


「……ねぇシズちゃん」


静雄の方へ一歩一歩近づいてくる臨也に、静雄は少し恐怖を感じ後ろに下がる。その繰り返しをしていたために気が付けば後ろは壁、前には臨也と挟まれてしまった。


「何で簡単にドタチンなんかの服を着ちゃうの?」


予想もしなかった言葉に静雄は「…は?」と言うが、臨也の表情はいつもの憎たらしい笑みを浮かべてはおらず無表情で怒っているのは明白だった。


「…手前が俺に牛乳ぶっかけたからだろ」


悪いのは臨也のはずなのに臨也を見ているとまるで自分が悪かったと思えてきてしまう。
そのせいか静雄の声はいつもより小さくなってしまった。



「そんなのは知ってるけど嫌なんだよ……シズちゃんが他の男の服を着るなんて」


ギュッと静雄の着ているジャージを握っては、はぁとため息をする臨也。



「…俺が誰の服を着ようと手前には関係ねぇだろ」

「あるよ。最悪なことにね…」


今度はわざとらしく大きなため息をはく臨也。
気が付けば先程よりも更に顔を近づけてきたことを疑問に思っていたら、そのままチュッとキスをする。


「俺は君が好きなんだから」

「、!?…な、な」

「だから牛乳かけた事は素直に謝るよごめんね、シズちゃんが好きすぎてつい虐めたくなっちゃってさ。これからはそういう事は一切しないからもう俺以外の服は着ないで」



自虐的に笑う臨也に静雄は「わかった」と小さく首を縦に振る。


「あとさ…、返事聞きたいんだけど」


恥ずかしそうにしている静雄に言うと、「…えと、その……」と言葉を濁している。


「いいよ、優しいシズちゃんはこんな俺にも振ることに抵抗があるんだろう?別に平気だか……」
「違う!!!」


いきなり大きな声で否定の声をあげる静雄に驚く。
静雄は悲しそうな顔でこちらを見ながらポツリと呟く。


「、俺…は臨也を振るつもりなんて……ない。」

「……じゃあ」



「………俺も…、好き、だ」


恥ずかしそうに、だけども嬉しそうに笑う静雄に臨也の心臓の鼓動がはやくなる。


「シズちゃんは俺だけの物だからね」

「……じゃあ、お前は俺のもんだからな」



嬉しそうに笑う静雄をギュッと強く抱きしめ、「俺、結構嫉妬深いからね」と言うと「んなこと知ってる」と苦笑しながらと言われた。

「誰にも渡さないから」




君を

簡単に

手放したりなんか

しない









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