■長編

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普通の学校より綺麗な保健室はベットの管理もきちんとしてあるので寝心地がとても良い。
まだ来たばかりの静雄だったが、ベットの温もりにだんだんと眠くなってきた。うとうとしてると突然保健室のドアが開く音がした。
普通なら自分には関係ないと思い気にしないのだが、足音はだんだんとこちらに近付いてくる。自分のベットの前で足音はピタリと止まった。
(……来る。)
静雄はそう感じると体を起き上がらせ、来る方をじーっと見つめる。ただ黙って……、そのままこちらに来た人物を見て静雄は一瞬驚くが、直ぐに不機嫌な顔になり口を開く。

「……何のようだ」

その声は今目の前に居る臨也に向けてだったのだが、臨也本人は「寝てなかったんだー」と静雄の質問と全く関係ない事を言っていた。

「こっち来んな死ね」

「酷いなぁもう。それよりさぁ、告白の返事はしないの?」

「…!、…手前の質問に答える義理はねぇ…。つか…何で手前が知ってんだよ?」


新羅にしか言った覚えが無い。つまりは新羅がこいつに言ったか、こいつが影で聞いていたかのどちらかだ。

「教えてほしい?」

ニヤニヤと笑いながら聞いてくるノミ蟲に隠さず舌打ちをし、ハッキリと「言わなくていい」と言う。俺の言葉を聞いたあと珍しく驚いた表情をし、「…何で?」と不思議そうに尋ねてきた。

「新羅がこの事を言わねぇって思ったからだ」

「根拠は?」

「勘」

「それだけ?」

「ああ。」

「つまりは───」




新羅を信じてるって事だよね?


「な、なんだよ……」


今の臨也から放たれているオーラはどす黒い。一目見て機嫌が悪いという事がわかる。
臨也は素早く静雄が座っているベットに乗ると、そのまま静雄を押し倒す。反応する前にやられたせいで、簡単にベットに倒された。

「な、なにしてんだよ!」

「んー?お仕置きでもしちゃおっかなぁと思ってさ」

「ついに頭が狂ったか…」

「へぇ、そんな事言っちゃっていいんだぁ。ふふ、そんなシズちゃんには───」



お仕置きしなきゃね



ニコリと笑ったと思ったらそのまま静雄の首筋に顔を近付けた。その瞬間──

「っ!?」


チクリと小さな痛みが走った。直ぐさま臨也から体を離すと、臨也は自分の唇をペロリと舐めながら

「まぁ、まずは俺のものっていう印ね」

と妖艶な笑みを浮かべながら言った。その姿はとても綺麗だったが、今の静雄には関係ない。


「っ、!ざけんな!」


顔を真っ赤にしながら急いでベットから降りると、静雄はそのまま保健室から出ていった。
そんな姿を見ながら臨也は口端を上げて静かに笑う。静雄の行動を思い出すと今度は声を上げて笑い始めた。


「ふふ…あはははは!」


(あんなに可愛いシズちゃんを見れるとは想像してなかったなぁ)

逃げる事なんて簡単に阻止できたが、臨也はわざと静雄を逃がした。理由は簡単だ。新羅を信じている事が気に入らないということでキスマークをつけたが、つけられた理由を知らない静雄はただお仕置きと言って意味のわからない事をしてきたと思っている。次会うときはどんな表情で自分を見てくるのか楽しみだ。
でも───


「逃げた子を放っておくわけにはいかないよね」


自分もベットから降りると静雄が逃げていったと思われる方へと足を進めていった。








*****











「どうしたの?」


授業が終わり静雄が帰ってきたと思ったら、その顔は眠そうな顔をしているわけではなく、ほのかに頬を赤らめながら不機嫌そうな怒ったような表情をしていた。


「…最悪だ……本当に何がしたいんだよあいつ…マジで最悪だ……」



(結構機嫌悪いなぁ…。)

見た感じであまり眠れなかったみたいだから、そのせいもあって更に機嫌が悪いのだろう。
本人に何があったのか聞きすぎると絶対に怒るから、どうしようか考えていると



「……あと少しで消えるから我慢するしかねぇな…」


はぁ、と溜め息と共に小さな呟きが聞こえてきたのでチラリと静雄の首筋を見る。

(あーあ。臨也何してんだか…。呆れ笑いしか出てこないよ……)


此処には居ない友人を想いながら、新羅は小さな溜め息を吐いた。


「静雄、牛乳飲む?」


はい。と、まだ一口しか口を突けてない牛乳パックを静雄に向ける。


「さんきゅ」


一瞬キョトンとしながらこちらを見たが、直ぐさま牛乳パックを受け取り飲みはじめた。


「それあげるよ」

「え?良いのか!?」

「うん。いつも静雄が飲んでるの思い出したら、急に飲みたくなって買ってみただけだから」


けどやっぱり僕はお茶でいいや。と苦笑いしながら言えば、静雄は機嫌がよくなったのか嬉しそうにまた牛乳を飲み始めた。


「そういえば静雄、いつ告白の返事するの?」

「あー…、明日の帰りだっけな…?」


ラブレターを取り出した静雄は手紙をもう一度見ると「明日の帰りだ」と軽く答えた。


「明日かぁ!結局静雄は告白の返事どうするの?」

「……決めてねぇ…」


予想通りの返答にはは、と小さく笑い、どうするんだろう…と心の中で呟く。
静雄は真剣な表情で「やっぱ付き合ってみるかな…」と呟いていた。


「まぁ、明日までまだ時間があるからさ、家でじっくり考えると良いよ」

「そう……だな…」


はぁ、と溜め息を吐く静雄を見ながら静雄みたいに心が優しいと、振るのもなかなか大変だなぁと改めて思う。



「返事なんてもっと楽に考えて良いと思うけど」

「ん…」



さんきゅ、とふにゃりと笑いながら言う静雄に一瞬臨也の気持ちもわかるかも。と考えるが、直ぐ様愛しのセルティを想像し「これは浮気じゃないから!」と叫ぶ。静雄は「変な奴」と言いながらまた牛乳を飲みはじめた。
静雄はまだ知らない。今日の帰りに今最も会いたくない人物に待ち伏せされているという事に─────……









 


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