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□8.涙で溶ける
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ご主人様が泣いている。
この前までいた男の人がいなくなっちゃったかららしい。
僕はあの人、嫌いだったからいいんだけども、ご主人様はそうではないらしい。

そんなことより、ご主人様、そんなに泣いたらおめめが溶けちゃうよ!
嗚呼、僕が人間で言葉が喋れたらいいのに!!
空に向かって吠えたら、お月様が返事をした。








「ご主人様〜、そんなに泣いたらだめだよっっ」

俺しかいないはずの部屋に誰かの声が響いた。
驚くと同時に背中に重みを感じて前に倒れ込んだ。

「ねぇねぇ、ご主人様、僕がいるから大丈夫だよっ、ねっ?」

振り向くと、見知らぬ男がキラキラした目をして俺に抱き着いていた。
一瞬見覚えがあるような気がしたが、こんな目立つ顔、忘れそうにない。
しかもご主人様と呼ばれる覚えもなくて軽くパニックだ。


「だ、誰だよあんた。どっから入ったんだ!!」

「僕だよ、ご主人様!エディだよ!」

「はぁー?」


エディはうちの飼い犬だ。
こんな大男じゃなかったはず…

「何言ってんだ!!エディ、おいでっ!」

「はーい」

「だからお前じゃないって…エディ」


いつもなら呼ばなくても飛んで来るようなやつが今日に限って見当たらない。
まさか、本当にこいつがエディ?と一瞬血迷ってしまった。
こいつは誰でエディはどこ行ったんだ!?




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