*Title 2*

□41.蜜月
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「ゆーま、これ、こっち運んじゃっていい?」

「ん、OK、とりあえずそこ置いとこうか」


桜が蕾を付け始めた3月のこと、卒業も就職も無事決まった僕は遊馬と暮らすべく、朝早くからバタバタと荷物を運んでいた。
引っ越し、と言ってももともと半同棲みたいになっていたし、ワゴンを借りてもらって一往復で十分事足りる量だった。


「よっしゃ、これで全部だよな?」

「はい、終わりです、ありがとうございました!刹那さんもお忙しいのに手伝ってもらっちゃってすみません」

「いーえ、あの王子が身を固めるってんだから喜んでお手伝いしますよ」

「あ、いや、そんなっ……」

にやにやしながら刹那さんに身を固める、と言われ恥ずかしくなる。
…そう、少し前に僕は遊馬にプロポーズされたのだった。


「せっちゃん、今日はありがとな、助かったよ」

「どういたしまして、王子に貸しを作るのは悪くないからね」


からかうように言うと、邪魔者は撤収します、と手を振りながら刹那さんは帰って行った。


「あ、刹那さん、折角だからご飯でも食べていってもらえばよかったね」

「まぁ、あいつなりに気を使ったんだろ…だって俺ら新婚だし?」

「っ……!!ぼ、僕ダンボール片づけてくる!遊馬は休憩してていいからね!!」


もう何年も一緒にいるのに、新婚なんていわれたらやっぱり気恥ずかしくて、誤魔化すために部屋を離れる。
男同士だから社会的には男女のカップルのような結婚ではないから今までと変わらないはずなのに、なんだかひどくドキドキしてしまう。


『一生幸せにするって誓うから、俺とずっと一緒にいてくれませんか?』


片付けの合間に、左手の薬指の指輪を眺めては幸せなため息が漏れる。


「っと、いけないいけない、さっさと片付けしなきゃ!」


ついぼんやりしてしまった頭を振ると荷解きに神経を集中させるのだった。




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