メインストーリー

□優しいkissを…vol.8
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(こんなに、ケガして…。気付かなかった…。そうだよね。私の警護をしてる時だって、何度も危ない目にあってるし…)

体を張ってする仕事だって、わかっているけど、やっぱり、好きな人が傷付くのは、イヤ…。
でも…そらさんがSPの仕事、誇りを持ってやってるって知ってるから、辞めてほしい、なんて言える訳ない…。


ふと、そらさんの胸板の上に雫がポツンと、落ちた…。
知らず知らずの内に、涙がこぼれていたのだ。

あわててタオルで拭くけど、次々に落ちていく涙。


「う…ん…。ん?」

そらさんが目を覚まして、起き上がる。

「あれ?うわっ!なんでオレ裸?っつーか、なんで泣いてんの?オレ、なんかした!?」

焦って、問いかけるそらさんに、私は涙を拭いて笑って見せる。

「ごめんなさい。…汗かいてたから、着替えさせようと思って」

「脱がせてくれたの?」

「だって、そらさん、起きないから…。これ、着替えです」

私がTシャツと、トレーナーを差し出すと、

「で…、なんで泣いてたの?」

心配そうに、また尋ねる。

「泣いてなんかないですよ」

「ごまかしてもダーメ。ちゃんと顔に書いてあるよ。せっかく服まで脱がせたのに、そらさん、ナンにもしてくれなくて残念って」

「!?そんな事思ってないです!!」

「ハハハッ。冗談。紗絢ちゃんの方が熱あるみたいに真っ赤だよ」

「もうっ!早くシャツ着て下さい!そんな冗談言えるくらい元気なら、私、帰ります」

「ええっ?帰っちゃうの?」

「うつるかも知れないから、帰ってって言ったの、そらさんでしょ?…って、わっ!」

立ち上がった私は、腕を引っ張られて、そらさんの胸に倒れ込み、そのまま、抱きしめられた。

「ゴメン。やっぱり、もう少しそばにいて?」

私の顔を自分の胸に押し当てて、そう呟く、そらさん。

私は、頬にそらさんの肌のぬくもりを感じながら、答える。

「ずっと、そばにいますよ。何があっても…」

(例え、どんなに傷ついても…。私に出来る事は、それだけだから…)

「紗絢ちゃん…」

そらさんを見上げると、頬に優しくキスしてくれた。

「オレ、今、すっげー色々しちゃいたい気分ナンだけど、今日は、ここまでね。ホントにうつっちゃうかもしれないし…、そろそろシャツ着ないと、ヤバいかも」

「あっ!ごめんなさい!大丈夫ですか?」

急いで、Tシャツをそらさんの頭に被せると、そらさんが袖から腕を出す。


「これ、買って来たんですけど…使いますか?」

「うわっ、懐かしい〜。ガキん頃、よくやってもらったなぁ」

トレーナーを着終わったそらさんが、水枕をベッドに置いて、寝転ぶ。

「ア〇スノンとかより、園長先生こっち派だったから…。この、耳元で水と氷の音するの、なんか落ち着くんだよね〜」

そらさんが頭を左右に揺らすと、氷水のカラコロと心地よい音がした。
子供の頃を、思い出したように目を閉じるさらさん。

私は、また布団を掛けると、そっと彼の手をとる。


いつも、そらさんにそうしてもらうように…。

私も、いつまでも、そらさんを癒してあげられる存在でいたい…。


そう、願いながら……。



―おわり―
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