メインストーリー
□優しいKissを… vol.3
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「…これで、よしっと!」
(パチン!)
私は手作りの、おせち料理をキーパーに詰めると、しっかりと蓋をする。
(もうそろそろ、お父さん、迎えに来るかな?)
今日は、1月1日。お正月。
お父さんが私と一緒に、おばあちゃんの所へ行く事になっている。
(本当は、そらさんと過ごしたかったんだけどな…って、しょうがないか。お父さん、無理して休みとってくれたんだし、忙しいんだから合わせないと。
それに、そらさんも今日は仕事だって言ってたし…。
明日は、一緒に初詣に行く約束だから、我慢しなきゃ)
一息ついて、荷物を玄関に運ぶ。
(このおせち、そらさんにも食べて欲しいな。仕事、遅くなるのかな)
そんな事考えてると、玄関のチャイムがなった。
「はーい。今、開けます」
ドアを開けると、飛び込んで来たのは、
「ハッピーニューイヤー!紗絢ちゃん」
「そらさん!?」
玄関で、いきなり抱きつかれた。
「どうしたんですか?今日は仕事なんじゃ…」
「仕事だよ。だから…お迎えに参りました。お嬢様」
「えっ?」
そらさんは、ウインクすると、私の手の甲にキスをする。
「って…もしかしてお父さんの?」
「うん。総理の警護は年中無休だからね」
「でも…、そんな事、一言も言わなかったじゃないですか。今朝のメールでも…」
「だって、びっくりさせたかったんだもん」
そう言いながら、荷物を手にとる。
「紗絢ちゃんが総理と実家に行く、って予定は変えられないだろうから、こうすればオレも紗絢ちゃんと、会えると思ってさ」
「そらさん…」
私が、そらさんの手を握りしめると、
「オレに会えて、うれしい?」
いつもの無邪気な笑顔で、私の顔を覗き込む。
「はい…」
何だかドキドキして、俯いてしまう。
本当は飛びつきたいほど、うれしいのに…。
「うわ。ダメだよ。そんな可愛い顔されたら、オレ……って、ダメダメ!仕事中だからね。明日、初詣に行くんだから、それまではガマン、ガマン。車で総理待ってるから、行こうか」
(ふふっ。逢えないと思ってたのに、こんな風に逢えるようにしてくれるなんて、幸せ。今年も良いことありそう)
そう思いながら、急いで車に向かうそらさんの後を追いかけた。