メインストーリー
□優しいkissを…vol.6
1ページ/5ページ
冷たい北風が吹く、冬の午後。
久しぶりに、そらさんの仕事が早く終わったので、私の家で夕飯を食べる事にして、近くのスーパーに買い物に来ている。
「そらさん、何食べたいですか?」
隣でカートを押してる、そらさんに聞くと、
「オレは、紗絢ちゃんの作ったのだったら、何でもOKだよ」
と、ニコニコして答える。
「うーん、それじゃ、鍋なんてどうです?寒いし」
「イイね、イイね!紗絢ちゃんと二人でお鍋なんて、超うれしい」
テンション上がってる、そらさん見てると、私も嬉しくなる。
「それじゃ、白菜と、ネギと、椎茸と…」
「お肉!絶対牛肉!」
「ふふっ。牛肉だったら、すき焼きか、しゃぶしゃぶか…どっちが…」
「そらさん!紗絢さん!」
野菜をカートに入れて、精肉コーナーに向かおうとしたら、突然後ろから声を掛けられた。
聞き覚えのある声に、振り返ると…
「憲太!」
「真壁さん」
そこには、買い物カゴを持った、真壁さんがいた。
「わー、奇遇ですね」
「何やってんだよ」
「何…って、夕飯の買い物ですよ」
いつもの、人なつっこい笑顔で答える真壁さん。
「ってか、お前ン家、近くにスーパーあるじゃん。なんでこんなトコまでわざわざ…」
「い…いいじゃないですか!たまには違う所で、買い物しようかなって…」
チラッと、私と目が合って口ごもると、私達のカートに視線を移す。
「それより、そらさん達は、鍋するんですか?」
「そうだけど?」
「いいなぁ。一人だと、鍋したくても、なかなか出来ないんですよね」
「今、コンビニとかでも、売ってるじゃん。一人用の鍋」
「それはそうですけど、やっぱり鍋は、大勢で食べた方が美味しいですよね。特にこんなに寒い日は…羨ましいなぁ」
上目遣いで、私とそらさんを交互に見つめる真壁さん。
その、捨てられた仔犬の様な眼差しに、私は思わず、
「あの、ウチでよかったら、一緒にどうですか?」
と、口にしてしまった。
「ええっ?紗絢ちゃん!?」
「いいんですか!?」
二人のセリフが同時に私に向けられたかと思うと、次の瞬間には、
「それじゃ、ボク、他の方達にも連絡しときますね!」
そう言い残して、真壁さんは、あっと言う間に立ち去ってしまった。
「って…ぅおいっ!憲太!?他の…って誰だよー!」
もちろん、そらさんの声は届いていない…。