メインストーリー

□優しいkissを…vol.9
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『♪〜』

コタツの上に置いていた、携帯のメール着信の音で目が覚めた。

(いつの間にか寝ちゃってたんだ…)

演劇部の公演で使う衣装を縫っていて、そのままコタツでうたた寝をしていた私は、2、3回瞬きをしながら、携帯を開く。

待受画面の時刻は、11時を回ったところだった。

“受信メール1件”の文字をクリックすると、そらさんからのメール。

『こんな時間にゴメンm(_ _)m
まだ起きてる?』

どうしたんだろ。
いつもの“おやすみメール”とは、少し様子がちがう。

『今、仕事終わったんですか?まだ、起きてますよ』

(まだ、って言うか、今起きたんだけど…)

そう思いつつ、送信ボタンを押して、携帯をコタツの上に戻すと、すぐに着信音がなった。

「ごめん起こしちゃった?」

何かあったのかと、心配したけど、そらさんの声は私を気遣いながらも明るくて、ほっとする。

「いいえ。演劇部の衣装を作ってたから…。どうしたんですか?」

「ちょっと、声聞きたくなっちゃってさ〜」


その一言に、心がキュンとする。
私は、そんな気持ちに気付かれないように、わざとイジワルを言ってみる。

「何か、桂木さんに怒られるような事でも、あったんですか?」

「な…。なんで?」

(あれ?図星だった?)

「そんな事でもないと、電話しちゃダメ?」

(あ、怒っちゃったかな…)

「冗談ですよ。私も、そらさんの声聞けてうれしいです」

「それは、本当かなー?最近紗絢ちゃん、オレからかうの、上手くなったよね〜」

「そんな事…」

(そらさんに比べたら、私の冗談なんて…)

「本当ですよ。そらさん、忙しそうだったから、声聞けただけでもうれしいです」

「そうだね、最近、帰り遅かったしなー…。
なんか、話してたら逢いたくなっちゃった。…今から、そっち行ってもい〜い?」

「え?」

コタツの周りに広がった、縫いかけの衣装に視線を落とす。

(どうしよう…。この衣装の仮縫い、今夜中に終わらせるつもりだったんだけど…)

「ゴメン、やっぱり、迷惑だよね」

私が黙ったままなので、がっかりした声を出すそらさん。

「あっ、大丈夫です!でも、そらさんこそ、疲れてるんじゃないですか?」

「全然平気。実は、マンションの下にいるんだよね」

「え?うちの?」

「そ。帰りに紗絢ちゃんちの前通ったら、部屋に明かりついてたから、もしかして起きてるかなって。声だけでも聞けたらいいやって思ってたんだけど…じゃ、今から行くよ?」

「はい、待ってます」

そらさんに逢える…そんな誘惑に勝てるわけないし。

自分でも呆れながら、衣装や材料を段ボール箱に詰め込むと、部屋の隅に押しやった。
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