メインストーリー

□優しいkissを… vol.11
1ページ/7ページ

「みどり〜、これも降ろすの?」

演劇部の次の公演に向けて、私とみどりは小道具の準備をしていた。

私は部室の棚の上にある、段ボール箱を、脚立に登って降ろしているところだ。


「うん。それで最後だよ」

下にいるみどりが、箱を確認しながら私に指示を送る。

両手で抱える位の大きさの箱を、みどりに手渡して、後ろ向きに脚立から降り始めると、

「気をつけてね」

受け取った箱を、机の上に降ろしながら、声をかけるみどり。

「大丈夫だよー。慣れてるから」

一段ずつ降りて、床に着地した…はずだった。

…でも、そこには何もなくて…。

「えっ?あれっ?」

ガタン!ドシーン!!

「紗絢!?」

座り込んでる私に、慌ててみどりが駆け寄る。

「いたたた。あはは、落ちちゃった」

「もう、びっくりさせないでよ。大丈夫?」

「うん、大丈…いたっ」

立ち上がろうとしたら、左の足首に激痛が走った。

「痛いの?」

「うっ…、ひねったかなぁ」

「とりあえず、椅子に座る?」

「ありがと」

みどりが持ってきた椅子に、掴まってなんとか座る。

「病院行った方がいいんじゃない?」

「いいよ。家に帰ってから湿布貼っとく」

とは、言ったものの、この痛み…。

「今の音は何!?」

小杉部長が部室に駆け込んで来る。

「あっ、部長!紗絢が脚立から落ちちゃって」

「なんですって?早く病院行かなきゃ。みどりちゃん、タクシー呼んで!いえ、救急車の方が速いわ」

慌てふためく部長。

「そんな大げさな…大丈夫です」

右足に力を入れて片足で立ち上がり、左足を床に着けた瞬間…。

「痛いっ!」

ストン!と椅子に尻もちをつく。

「紗絢!やっぱり病院行こう?」

「大丈夫。ちょっと冷やしとけば治るよ」

「ダメよっ。みどりちゃん、付き添ってあげて」

今にも119番に通報しそうな部長を、タクシーで病院に行く事で納得させると、学校の裏門まで私はみどりと部長に肩を借りて、タクシーで病院に向かった。


「ごめんね、付き合わせちゃって」

タクシーの中で、心配そうな顔をしてるみどりに、笑ってみせる。
けど、痛みに思わず顔を歪ませると、みどりは不安になったのか、

「そらさんに電話しようか?」

と、携帯電話を取り出す。

「だめ!それはやめて。心配するし、仕事の邪魔したくないから」

「…わかった」

みどりは不服そうだったけど、それ以上は言わなかった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ