メインストーリー

□優しいkissを… vol.14
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一歩店内に足を踏み入れると、そこは赤やピンクのハートが溢れていた。


「うわ、もうすっかりバレンタインだね」

私とみどりは、演劇部で使う衣装の材料を買いに、ショッピングセンターに来ている。

正面入り口近くのバレンタイン特設コーナーには、色とりどりにラッピングされたチョコレートや、手作りの為のグッズが所狭しと並んでいて、年齢問わずたくさんの女性客が品定めをしていた。


「はぁ…また独り身には厳しいイベントが…」

「みどりは誰かにチョコあげたりしないの?」

「あげない事はないんだけど。義理チョコとか、友チョコ…。でも…今年は頑張っちゃおっかな」

「えっ?本命いるの?誰?」

「それは内緒。ちゃんと成功したら教えるね」

「本当?絶対だよ!」

ちょっとだけ照れてるみどりの顔が可愛くて、なんだか嬉しかった。

「私の事より紗絢は?そらさんのチョコ用意したの?それとも、今年も一緒に作るとか?」

「えっとね今年は作るっていうか、一緒に“チョコファウンテン”するの」

「あぁ、あのスイーツバイキングとかにある?」

「うん。卓上用のを見つけてね、そらさんに話したらすごく乗り気で」
「いいなぁ、相変わらずラブラブで」

「ちゃんとみどりや小杉先輩用にチョコも作るつもりだから。お父さんや他のSPのみんなにもお世話になってるからあげたいし」

「ありがと。でも大丈夫?そらさんにプレゼントも何か手作りするって言ってなかった?」

「それなんだけど…」

私達はバレンタインコーナーを横目に、手芸用品店へ向かった。



「えっ?!まだ用意してなかったの?」

「作る物は決めてるんだけど、ここんとこ何だか忙しくて材料買いに来る暇なかったんだよね」

「何作るの?」

「ネックウォーマー。そらさん、マフラーは持ってるけど、ネックウォーマーは持ってないみたいだし。それに、正直今からじゃそれくらいの物しか出来そうにないしね」

「そうだね。紗絢の気持ちがこもってれば、きっとそらさんも喜ぶよ。じゃ、演劇部の材料は私に任せて、早く毛糸選んでおいでよ」

「えっ?いいよ。そっち終わってからで」

「いいから、いいから」

そう言いながら、みどりは私の背中を押して毛糸売り場に連れて行くと、さっさと布地の置いてあるコーナーへ去って行った。

私はみどりの心遣いに感謝しながら、毛糸選びを始めた。

(あ、この色、そらさんに似合いそう)

オレンジに朱色やベージュが交じった、暖かくて優しい色。

その毛糸玉を手に取ってみる。

(わ。ふわふわして気持ちいい。糸がストレートじゃなくて、ポコポコしてるから、模様編みとかしなくてもいい感じに仕上がりそう)

私は出来上がりをイメージして、その毛糸を買う事に決めた。
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