書き下ろし
□BIRTH DAY NIGHT
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今日、7月20日はオレの誕生日。
数年前までは、『海の日』っていう国民の祝日にもなっていたのに、いつの間にか『海の日』は7月の第3月曜日に移行された。
せっかく、誕生日が祝日で、覚えて貰いやすいし、なんか全国的に祝ってもらってる気がして(言い過ぎ?)気に入ってたのに。
まったく、政治家っていうのは…。
っと、その気まぐれな政治家を警護するのが、オレの仕事でもあるんだけど…。
あ、平泉総理は別ね。
あの人は、マジで日本の事考えて、自分を犠牲にして一生懸命働いてる、尊敬する政治家だから。
それに…紗絢ちゃんの父親でもあるわけだし。
その平泉総理から、なんと誕生日プレゼントをもらった!
それも紗絢ちゃんと一緒に行ってこいって旅行券を!
これって、やっぱアレだよね?
もう紗絢ちゃんの婚約者として、ちゃんと認めてもらってるっつー事っしょ?
今まで、認めてもらってなかったとは思わないけど。
オレも紗絢ちゃんもお互い結婚を意識して付き合ってたし、その意志は総理にも伝えてあったし。
でも、紗絢ちゃんが大学を卒業するまでは、オレも彼女の相手としてふさわしい男って思ってもらえるように、頑張ってるつもりだったから(それまでのオレの素行云々は、総理の耳にも多少は入ってたみたいだし)、だからこのプレゼントは、マジでかなりのサプライズプレゼントだったっつーワケ。
サプライズと言えば……。
「プッ、くくっ」
「何笑ってるんですか?」
気付くと、紗絢ちゃんがリボンのついた細長い小さな箱を手に、リビングに入ってきたところだった。
「別に。なんでもないよ」
オレは笑いをこらえて、答えた。
「うそ。気になるじゃないですか」
「あははは、ゴメン。なんか、ロッカーにいた紗絢ちゃん思い出したら、笑いが。はははっ」
「もう!ひどい!あれは…」
「わーってるって。昴さん達にやらされたんだよね?でも、それに従っちゃうところが紗絢ちゃんらしいっつーか、可愛かったし、扉開けた瞬間の紗絢ちゃん」
そう、官邸のSPルームで桂木班のメンバーと紗絢ちゃんが、オレの為にバースデーパーティーを開いてくれたんだ。
そこで、オレにサプライズをしようと、昴さんの提案でロッカーに隠れていた紗絢ちゃんは、オレがかけた携帯の音で隠れてたのがバレてしまい、計画は失敗に終わった。
実際、オレにとってはロッカーに紗絢ちゃんが居た事自体、かなりサプライズだったけど。
そして、パーティーが終わって、家にプレゼントを用意してるからっていう、紗絢ちゃんの誘いで、オレは彼女の家に来ている。
「そんなに笑うなら、このプレゼント、どうしようかな?」
ちょっと怒った顔をして、プレゼントを背中に隠されて、オレは慌てた。
「えっ?オレにくれるんでしょ?」
「でも、また笑われちゃうかも」
「んな事ないってー!」
「そうですか?…それじゃあ」
ソファーから床に降りたオレの前に膝をついて、持っていた箱を差し出す紗絢ちゃん。
「やったぁ!ありがとう!開けていい?」
紗絢ちゃんがコクンと頷くのを確認して、オレは急いで、でも丁寧に箱のラッピングを解く。
箱を開けると、中にはネックレスが入っていた。
星の形をした、ブルーのクリアビーズと、“SORA”のデザイン文字が彫ってある、シルバープレートがトップについている。