メインストーリー
□優しいkissを… vol.5
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お正月も終わり、街がいつもの様子に戻った頃、私は官邸に来ていた。
お父さんが、お正月のお詫びと、おせちのお礼を兼ねて、私と食事する時間をとってくれた。
「紗絢さん!」
入り口で声をかけて来たのは、真壁さん。
「遅くなりましたが…明けましておめでとうございます!」
「明けましておめでとうございます。いつも元気ですね」
「はい!」
こっちまで元気になりそうな、満面の笑顔。
その笑顔を見ていたら、去年、バーで会った事を思い出した。
「そう言えば…いつかは、すみません。置いてっちゃって…」
「え?…あぁ、あの時!気にしないで下さい」
「みどりに聞きました。小杉部長と3人で飲んでたそうですね」
「はい。楽しかったですよ」
「それなら、よかったです」
私も笑顔で応えると、真壁さんに見送られながら、官邸に入る。
ここに来ると、つい探してしまう。
(そらさん、いないかな)
初詣に行ってから、そらさんは仕事が忙しいみたいで、メールと電話のやりとりしかしていない。
(今日も仕事って言ってたしね)
と、諦めつつも、
(そらさんの事だから、元日みたいにびっくりさせようとしてたりして…。私が、今日来る事は知ってるから…)
なんて、期待しながら廊下を歩いていると、
「紗絢ちゃぁん!!」
私を呼ぶ声が聞こえて振り返る。
そして、向こうから走って来たのは…。
「逢いたかったぁ!」
大きく手を広げて、そらさんが私の目の前で急ブレーキをかける。
「っとぉ、ヤバい、ここじゃ駄目だ。こっち来て」
「え?ちょっと、そらさん?」
そらさんは、私の手を握ると、人目につかない大きな柱の陰に、引っ張って行った。
そして、繋いだ手を自分の方に引き寄せると、私を力強く抱き締める。
「よかった。すれ違いにならなくて。オレ、もう少ししたら、出るとこだったから」
「私も、逢いたいなぁって」
「マジで?……それじゃ、キスしてもいい?」
私の背中を柱に押し当てると、両手を柱について、顔を近づける。
(久しぶりに顔を見て、心臓は鳴りっぱなしなのに…)
間近で顔を見るのに耐えきれず、目を閉じると、優しくキスしてくれた。
そして、そっと頭を撫でてくれようとして………、何か白い物が目に入った。