メインストーリー
□優しいkissを…vol.8
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暦の上では立春も過ぎ、少しずつ暖かさを感じ始めた、冬のある日。
大学の授業と部活が終わった、その帰り道―。
突然の海司からの電話だった。
「久しぶり、海司。どうしたの?」
「今、忙しいか?」
「学校、終わったから、今から帰るとこだけど…何かあったの?」
「実は…さっき、そらさん仕事終わって帰ったんだけど、なんか具合悪そうなんだ」
「えっ!?」
「お前、ちょっと様子見に行ってくんねーかな…」
「わかった!教えてくれてありがとう!」
海司が言い終わるのも、もどかしく、電話を切ろうとすると、大きな声が引き止める。
「ちょっと待て!落ち着けって。ったく、相変わらずだな。明日のシフト俺が代わるから、そらさんに休むように、言っとけよ」
「うん。ゴメン、本当にありがとう」
そういえば…一昨日の夜、一緒に食事した時、暫く夜勤続きで忙しくなるからって言ってたっけ。
毎日、メールはくれてたけど…無理したのかな…。
私は携帯を握りしめ、そらさんの家に急いだ。
息を切らしながら、部屋の前にたどり着くと、インターホンを押す。
いつもは、インターホンの音より先に、私の足音に気付いて、すぐに返ってくる返事がない…。
(寝てるのかな……。どうしよう、起こしちゃ悪いし…でも、起きれない位、具合悪かったら…)
2度目のインターホンをためらっていると、ドアの向こうで微かに物音がした。