メインストーリー

□優しいKissを… vol.1
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店を出て、ふらふらと階段の方に行こうとする私を、そらさんが慌て掴まえる。

「紗絢ちゃん!階段無理だってば! ここ3階だし、エレベーターで行こう」
そう言いながら、階段の横にあるエレベーターのボタンを押す。

(おかしいなぁ…あれくらいじゃ普段、酔わないのに…。やっぱ、一気飲みが、まずかったのかなぁ)

「そらさん…ゴメンらさい」
私は肩を抱かれたまま、そらさんの肩に頭をコツンと乗せる。

「紗絢ちゃん?」
そらさんが、首を傾けて私の顔を見る。

「何かあったの?珍しいよね。そんなに酔うのって…」

(うう……そんなに優しい目で見ないで…
女の人と一緒かもって疑ってたなんて…とても言えない…)

私は、そらさんから離れると、降りてきた空っぽのエレベーターに乗り込む。
そして、そらさんが乗るのを待っって、1階のボタンを押す。

3、4人乗ったら一杯になりそうな、狭いエレベーターの中、背中にそらさんの視線を感じながらも、私は振り向く事が出来ないでいた。

(そらさん、何も言わない…。面倒クサイ女とか、思われてるんじゃないかなぁ…。真壁さんもいたのに…)

「そらさん、私やっぱり…」
(一人で帰ります)

そう言おうと、振り返ったとき、そらさんの手が私の肩越しにエレベーターのボタンを押した。

1階に着いて、開きかけたドアがゆっくりと閉まって…。

そらさんの唇が、そっと私の唇に触れる。

「そらさん……」

「なんかさ…酔っぱらってる紗絢ちゃんも、かわいいよね」
少し赤くなった、そらさんが笑った。

「っつーか、いつもオレの方が先に酔っちゃうしね」
そう言って、ウインクする。

体の奥から熱いものが込み上げて、涙がこぼれた。

「わ!ゴメン!びっくりした?」
そらさんが『閉』のボタンから手を放すと、またゆっくりとドアが開いて、私逹は誰もいないビルの入り口に降りた。

そらさんは、私を優しく抱きしめて髪を撫でてくれる。

体中が暖かくなって、なんだかフワフワするのは、お酒のせいじゃないよね?




‐おわり‐
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