メインストーリー

□優しいKissを… vol.3
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車に近づくと、後部座席のドアを、そらさんがサッと開けてくれた。

「お父さん、あけましておめでとうございます」

「あけましておめでとう、紗絢。すまないね、せっかくのお正月に…」

「そんな事ないよ。おばあちゃんも楽しみにしてるよ」

中にいたお父さんに挨拶しながら、車に乗り込む。

ドアを閉めて、後ろのトランクに荷物を運ぶそらさん。

(なんだか、よそよそしいんだけど…。もしかして、実家に行くから、緊張してる?)

「あけましておめでとうございます、紗絢さん。今年もヨロシク」

運転席から振り向いて声をかけてきたのは、瑞貴さんだった。

「あ、おめでとうございます、瑞貴さん。こちらこそよろしくお願いします」

(瑞貴さんも、お正月、お仕事なのかー。SPの仕事って本当に大変だなぁ)

そう思ってると、そらさんが戻ってきて、助手席に乗り込む。

「そらさん、遅いですよ。やっぱり僕が呼びに行った方が…」

「何言ってるのかな?瑞貴君?早く車出して」

「いたっ」

(?)

瑞貴さんは太ももの辺りを擦りながら、車を出した。


実家に着くと、お父さんはおばあちゃんに挨拶して、お母さん
のお仏壇の前に座り、長い間手を合わせていた。
じっと遺影を見つめながら、涙ぐんでいるようだった。

私は、そっと部屋を出て、キッチンで持って来たおせちと、おばあちゃんが作った料理を、お皿に盛りつける。

「おばあちゃん、こんな感じでいいかな?」

「あぁ、上出来、上出来。どれもよく出来てるよ」

「ホント?おばあちゃんに褒められたら、自信ついちゃうな!」

「誰の為に腕あげたんだろうね」

「えっ?…やだなぁ、何言ってるの?」

顔が赤くなったのを見られないように、反対向いて取り皿を用意する。

「これは、旨そうだな」

お父さんが、キッチンの入り口から顔を出した。

「お父さん、今、料理運ぶから、向こうの部屋に座ってて」

そう促すと、お父さんは一旦行きかけて、

「そうだ、紗絢。外の二人にも入ってもらいなさい」

「えっ?二人って…瑞貴さんと、…そらさん?」

「あぁ、お正月なんだし、こんなに沢山のご馳走、三人じゃ食べきれないだろう」

「いいの?」

お父さんは、にっこり笑って頷く。

「紗絢も、広末君に食べて欲しいだろ?」

「お、お父さんてば!」

私は、急いでキッチンを飛び出す。
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