メインストーリー
□優しいKissを… vol.3
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外に出ると、二人は車の中にいた。
駆け寄った私に気付いて、そらさんが車を降りて来る。
「どうしたの?寒いのに上着も着ないで!」
自分の上着の前を広げて、すっぽりと私を包み込んでくれた。
「あの…お父さんが一緒におせち食べないかって」
「え?総理が?」
「はい。あの、私も作ったんです。よかったら…」
「マジで?紗絢ちゃんのおせち食べれるの?オレ、超うれしい〜!」
そらさんは私を抱き締めたまま、助手席のドアを開ける。
「瑞貴!総理がおせち食べていいって。紗絢ちゃんの手作りおせち!」
「本当に?よかった、今、コンビニ弁当でも買いに行こうかと…って、僕、もう、ご馳走様かな」
(はっ!)
私は瑞貴さんの視線に気付いてみると、そらさんの上着にすっぽりと包まれて、抱き合っている。
急に恥ずかしくなって、そっとそらさんの胸を押して離れると、
「あの、瑞貴さんも、どうぞ」
そう言って、家に戻ろうとした時、そらさんの携帯の音がして、振り返ると上着のポケットから携帯を取り出してる、そらさんが見えた。
「もしもし、はい、はい…えっ?…あ、はい」
さっきまでの笑顔とは全然違う、ちょっと険しい表情…。
(何か…あったのかな?…)
「はい、分かりました。それじゃ、こっちでも確認してみます」
電話を切ると、車の中の瑞貴さんと何か話して、こっちに向かって来た。
「紗絢ちゃん、ゴメン。何かスケジュールミスがあったみたい」
「えっ?」
「総理に確認してみるから、お邪魔するね」
そう言って、家に入っていった。
(ミス…って、それじゃ、おせちは? 帰っちゃうの?)
玄関の前で動けないでいると、後ろから瑞貴さんが近づいて来た。
「残念な事になっちゃったね」
振り向くと、
「帰らなきゃ行けないんですか?」
私は、すがるように瑞貴さんに問いかける。
「うーん、多分。…」
(がっかり…)
思い切り肩を落とす。
その様子を見ていた瑞貴さんが、
「せっかく総理とのお正月だったのにね……違うか。そらさんの方かな?」
(!)
「紗絢さんて、分かりやすいですよね」
(笑われてるし…)
「明日は、初詣行くんでしょ?」
「知ってるんですか?」
「もちろん。そらさんが言いふらしてましたから」
言いふらしてる、そらさんの姿が目に浮かぶ。楽しみにしてくれてるんだ。